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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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98歳「日本一のおばあちゃん役者」他界 2010(平成22)年

2020.04.03 by 西川昭幸

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「北林谷栄」の画像
北林谷栄

平成に入り、昭和の映画で活躍した俳優さんが多く他界している。

その中で2010(平成22)年4月27日、肺炎のため98歳で亡くなった北林谷栄(本名・安藤令子)を紹介しておきたい。

この女優さん、皆さんがご承知の通り、舞台や映画で「おばあちゃん」役が多かった。

北林は1911(明治44)年5月21日、東京は銀座生まれのチャキチャキの江戸っ子である。

今の資生堂の向かいにある洋酒問屋のお嬢さまとして誕生した。

芸歴は古い。デビューは1936年(昭和11)年築地小劇場の「どん底」で25歳。

その後「泰山木の木の下で」のほか「タナロジー」「黄落」などで紀伊国屋演劇賞受賞。

映画では「キクとイサム」で第10回ブルーリボン賞主演女優賞、第14回毎日映画コンクール主演女優賞をダブル受賞するなど映画賞も多数ある。

1978(昭和53)年紫綬褒章。1男1女に恵まれたが、その後離婚している。

1947(昭和22)年民衆藝術劇場で(第一次民藝)の結成に参加。36歳の時である。

これ以降「民藝」一筋で活躍する。

1950年には滝沢修、宇野重吉らとともに劇団民藝(第二次民藝)を設立し、看板女優として名を馳せた。

北林は27歳の時からおばあちゃん役者だった。

「左義長(とんど)まつり」という芝居で故・宇野重吉の推薦で70歳の女性を演じ、これが大好評。

それ以来、老け役を得意とし、1959(昭和34)年の「キクとイサム」(監督/今井正)では役作りのために前歯を6本抜くなどして凄まじい女優魂を見せつけた。

70歳を前にして1980(昭和55)年には、半年間の英国観劇留学も体験。

演劇に対する情熱は少しも衰えをみせなかった。

北林は舞台人で有りながら映画出演でもその存在が際立っていた。

映画では圧倒的存在感で異彩を放つ!

映画デビューは1937(昭和11)年公開の成瀬己喜男監督の「禍福」。黒澤明監督の「醜聞」では志村喬演じる老弁護士の妻を演じた。

その後「原爆の子」などで個性的な老婆を演じ評価を高めていった。

1956(昭和31)年、市川崑監督の「ビルマの竪琴」には、物売りの老婆役で出演し民衆のたくましさ、豊饒さを演じた。

1985(昭和60)年に、同監督で再度映画化された「ビルマの竪琴」にも同じ役どころで出演している。

1959(34)年の「キクとイサム」では混血児の孫を育てる祖母を演じ、第10回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞した。

そのほか今村昌平監督作「にあんちゃん」ではサンフランシスコ国際映画祭最優秀助演女優賞を獲得。

今村昌平監督「にっぽん昆虫記」、市川崑監督作「鍵」、今井正監督作「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」、岡本喜八監督作「肉弾」など数多くの名作・話題作に立て続けに出演した。

1991(平成3年、80歳)公開の映画「大誘拐/RAINBOW KIDS」では、可愛らしくも、転んでもタダでは起きない、強かで得体の知れない老ヒロイン ・柳川とし子役を演じ、映画もヒットし、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど各映画賞を総なめにて健在振りを示した。

2002(平成14年、91歳)公開の『阿弥陀堂だより』で第15回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。最高齢者の受賞が話題になった。

この作品、既に脚が悪くなり、歩行も覚束ない状態であったが、主演を務めたのが劇団民芸創設時からの盟友であった故・宇野重吉の息子・寺尾聰であることから出演を快諾し、阿弥陀堂を守る老女を演じた。

話題の出演作も多い、「縮図」「日本の悲劇」「真昼の暗黒」「炎上」「オモニと少年」「キューポラのある街」「人間の壁」「華麗なる一族」「黒部の太陽」「橋のない川」「悪魔が呼んでいる」「地の群れ」「人間の証明」「駅」「あゝ野麦峠」「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」「利休」「大誘拐」「黄泉がえり」などがある。

エピソード満載の個性派俳優

北林谷栄にはいろいろなエピソードがある。

老け役が余りにも見事だったので、新派の名優花柳章太郎が「築地小劇場」に観に来て、役作りを問われるままに、年老いたメーキヤップを披露して名優をうならせた。北林は「怖いもの知らずで、名優に伝授したけど、おかげで以来ずっと可愛がってもらった」と笑う。

衣装集めの凝りようも凄かった。

旅公演で地方に行けば朝市で野菜や魚を買っておばあさんと仲良くなって着ている物を分けてもらう。

そうして集めたおばあさんの衣装は自宅に山と積まれていた。

童女のような包容力と鬼女のような厳しさ—この両極端をあわせもつ稀有な女優であった。

ロマンチストでいつになっても可愛い少女のような一面があり、男の人大好き。

彼女の強さ、激しさが愛と憎、底なしの優しさと底なしの厳しさの両端を矛盾なく往還した。

大抵の女優は「あそこまでなれない」というが、先輩には一目も二目を置いていた(木村隆)という。

芸一筋に生き、惜しまれる女優の死だった。

拙著<美空ひばり最後の真実>が発売中です。

Filed Under: 四方山話, 平成 Tagged With: 今井正, 北林谷栄, 成瀬己喜男, 黒澤明

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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