
1966(昭和41)年〜1988(昭和63)
映画はフィルムからデジタルへ
2013(平成25)年12月の日本映画製作連盟の統計によると全国のスクリーン数は3,318。この内、フィルム上映のスクリーンが487(約15%)。後は2〜3年前からデジタル化になっている。
映画館を経営する会社も様変わりしてきた。新興勢力の台頭である。スーパーや、複合ビルに映画館が集中したため、ワーナーなどは家賃が払えずイオンに吸収されてしまった。
現況の興行勢力図
スクリーン別に見てみると、イオンの「イオンシネマ」609。東宝系の「TOHOシネマズ、他」547。ユナイテッド・シネマ㈱の「ユナイテッド・シネマ、シネプレックス」320。松竹、「MOVIX、他」259。東急の「109シネマズ」165。東映系の「T・ジョイ、他」152。㈱コロナの「コロナシネマワールド」129。佐々木興行㈱の「シネマサンシャイン」97。この9社で2,278スクリーン。実に全国の68,7%を占めている。

この9社は、殆ど映画館をデジタル化にした。ところが、このデジタル化が劇場を泣かせている。機械故障が続出しているのだ。
トラブルが絶えない配給システム
製作会社が作品のコピーを恐れてコピーガードシステムを採用している所に問題が有る。少し専門的になるが、作品はセキュリテイーに重きを置いたDCP加工され、ハードディスクで配給されている。
映像と音声が別々に送出され、データーはサーバーに取り込まれ映写する。洋画の場合はこれに字幕用ディスクが付随する。
要するに邦画は映像と音声。洋画はこれにスーパーインポーズが入る。これらを1つに纏めてスクリーンに投射する。ところが映像と音声が同調しない。字幕スーパーが口と合わない。全く音の出ない場合が有るなど、トラブルが絶えない。

デジタル機器は雷にも弱い
また複合(商業)ビルは、電源が切れたり、ボルト数が落ちたり、エレベータノイズが入ったりと一定の電源が確保されず、映写が途切れたりする。また、デジタル機器は雷にも弱い。磁力が働くのか、映写が止まることが多い。
併せて、最近のスーパーや複合ビルには映写室が無い。坪いくらの計算を強いられビルは経費削減と、機器のデジタル化で映写設備は壁に埋め込みで設置される。事務所で映画のオペレートをしているのが現状で、映写トラブルの場合は苦労する。
デジタル化が劇場を泣かせている
現場では、映写トラブルが起きた場合、お客様に招待券を渡し帰って頂くか、別の映画を観せて穴埋めしている。これが毎日、全国の何処かで起きている。事故は日常茶飯事の出来事で、新規システムの過度期とはいえ、デジタル化が劇場を泣かせている。
高額な設備投資で過大な負担
もう1つ問題が有る。フィルムの映写機に変る、デジタル映像機器のサーバーとプロジェクターが1,200万円程掛かることだ。過大な設備投資で、これが弱小映画館には負担で閉館が相次いだ。
銀行やローン会社の借り入れも電気機器扱いされ、ローンが五年間しか組めず、返済を困難にしている。また、現場では映写技師が高齢化して、デジタル化に付いていけず退職する人が多かった。
活動屋魂が薄れて行く
そのため、映画を知らない若者が技術だけで、業界に携わり、往年の活動屋魂が薄れて行く事へ危惧する声も聞かれる。
また、フィルムしか上映出来ない映画館は、2012(平成24)年以降の新作が上映できない。製作会社がフィルム製作をしていないからだ。いろいろ課題のある映画界だが、徐々に変わって行くにしても、早急な対策が望まれる今日この頃である。

