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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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アニメを作ったことの無い人間が作った不思議なアニメ

2020.02.16 by 西川昭幸

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「花とアリス殺人事件」(ティ・ジョイ)

「花とアリス殺人事件」の画像
公開当時のポスター

実写映画「花とアリス」の前日譚 

「花とアリス殺人事」は、2015(平成27)年2月に公開された、岩井俊二の原作・脚本・監督による日本の長編アニメーション映画である。 2004(平成16)年公開の実写映画「花とアリス」の前日譚となる作品であり、声の出演も同作に出演した蒼井優と鈴木杏が務めた。 作品は新宿バルト9ほか全国40スクリーンで公開され、第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した。

蒼井優と鈴木杏が小学生を実演するのは無理

岩井俊二によれば、企画自体を考えたのは、前作が公開されたすぐ後である。

「他の映画と違って、始まりがあって終わりがある物語というよりも、花がいて、アリスがいると、もうそれで話が次から次へと出てくる物語だったので、続きが浮かんできてしまって、止めることができなかった」

しかし、スピンオフの前日譚として、最初は小学校の設定にしていたため、蒼井優と鈴木杏が小学生を実演するのは無理と考え、最初からアニメーションで描くことを考えた。 そして、岩井が自分でもやれるアニメがあると思って辿り着いたのが、まずは実写映像を撮り、それをなぞるかたちでアニメーション映像にする、ロトスコープと呼ばれる手法である。 岩井は、実写の監督なので、ベースに役者さんの芝居を据えてアニメにする方がやりやすかった、という理由もある。

スタジオジブリの鈴木プロデューサーに相談

脚本を書き上げた岩井は、スタジオジブリの名プロデューサー鈴木敏夫に相談したが、ロトスコープには反対された。 しかし、反対した鈴木は、以前から岩井の才能に注目していた。

「実写畑の人がよくアニメーションをやったなと思うだろうけど、岩井さんの作品に絵コンテがあるのは明らかだと思っていたので、岩井さんならアニメーションを作れるなと昔から思っていたんです」

その後、企画は予算を含め、様々な都合により、実現までいかず、途中で立ち消えになった。 数年後、鈴木の下で映画のプロデュースを学んだ、株式会社 STEVE N’ STEVENの石井朋彦に、たまたま作品の構想を話したことで、岩井のロトスコープの可能性に対する好奇心と、石井が持つ3DCGの発展性が重なり、ロトスコープと3DCGが上手くコラボレーションできないか、とプロジェクトが再始動した。

ふたつ分の現場をやったような感じ

「漫画家を目指していたこともあったので、絵を描くのは好きなのですよ、その絵を動かしてみたいなという欲求があって」と語る岩井が全編の絵コンテを描いて、撮影はスタートしたが、結果的にかなり試行錯誤の作業となった。

「実写の場合は撮って編集で仕上げてしまえば終わりなんですが、今回はそこからアニメの制作が始まるので、ふたつ分の現場をやったような感じではありましたね。 まずはオーディションで役者さんを選んで、実際に撮影を行いました。 ロトスコープの場合は、映像はあくまで素材になるので、ひとりで何役もやっていたりしますよ。 20日間くらいかけて撮りましたね。 それをベースに3D CGを作ったり、ロトスコープとして手描きでなぞって、さらに3D CGであがったものを手描きで修正したり、とかいろんなことをやって、こういう仕上がりになった感じです。 当初はメインキャラクターを3DCGで作って、周りを囲んでいる人々を、エキストラを使って撮影しロトスコープで作ろうとしていました。 しかし最終的にはメインキャラクターの一部をロトスコープにしたり、中盤は全てロトスコープだったり、とどんどん両方の技術が複雑に絡むようになっていきました」

ロトスコープは、実は時代劇に向いている

こうした苦労の末、無事、作品を作り上げた岩井だが、今後のアニメ制作への意欲について、少し意外にも思えるアイデアを語っている。

「予定はまだありませんけど、またやりたい気持ちはありますね。 やっている間中おもしろかったですね。 だいぶ作り方がわかったので、次はもうちょっと安定的に作れたらなあと思います(笑)。 ロトスコープは、実は時代劇に向いているなって思っているんです。 3D CGでも着物の表現って難しいと思うんですよね。 そのときに、ロトスコープならほぼ正確に表現できるんで、時代劇はあっているんだよなっていう。 ぼくがいきなり時代劇やるのって違和感あると思いますが」

拙著<美空ひばり最後の真実>が発売中です。

Filed Under: アニメ, 平成 Tagged With: ロトスコープ, 岩井俊二, 蒼井優, 鈴木杏

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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