
「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章“遥かなる旅立ち”」(松竹)

38年ぶりのリメイク
「宇宙戦艦ヤマト2199 第一章『遥かなる旅立ち』」は、2012(平成24)年4月に公開された、総監督・出渕裕による日本のアニメーション映画である。 もともとは、昭和五十年代に一大ブームを巻き起こした名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」のリメイク版TVシリーズを第一章~第七章に分け、1~2話を第一章として二週間限定でイベント上映したものである。 第一章は10館程度の上映だったが、好評に次ぐ好評で、イベント上映、BD・DVDは累計50万枚を超えるヒットとなり、プラモデルをはじめとする関連商品の展開などにより、開始1年半で経済圏100億円を突破した。
リメイクの噂は聞こえてくるけど、ことごとく流れていた・・・
実はリメイク企画は何度も立上がっては頓挫しており、元々はアニメ映画「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」と実写映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」を併せ、計3作品セットで企画されていた。 そして結果的には、 「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」の制作に関わっていたXEBECがリメイクを担当することになり、出渕裕が監督に推薦された。 しかし、出渕自身は新作と勘違いし、一瞬、逡巡したらしい。

「宇宙戦艦ヤマトという作品は『III』や『完結編』のときにデザイナーとして参加したこともあったのですが、ヤマトってなかなか難しい作品だったんですよ。 権利関係がいろいろありましたから。 でもそのあたりも色々と全てクリアにされているようなので、じゃあ、是非、引き受けましょうと。 しかも、よくよく話を聞いたら、リメイクということだったので、それならやりたい、いや、むしろ、やらなきゃって、思いました」
「オリジナルへのリスペクト」と「脳内補完のビジュアル化」
これまでにもいろいろな作品のリメイク企画があったが、名前は同じでも、結局は、全く別物になることが多い。 しかし、「ヤマト」の熱心なフアンであった出渕には、旧作をきちんとリスペクトし、昔の「ヤマト」をビジュアル的にブラッシュアップしたいという基本コンセプトがあった。
「基本的なフォーマット、ストーリーの中で起こる各種のイベントについてはあまり変える気はなかったです。ただ、昔の作品の場合、どうしてもテンポがゆったりとしているので、今の人にはちょっと間延びしてみえるんですよ。だったら逆に、取捨選択してテンポアップすればストーリーを圧縮できるんじゃないかと。(中略)そうやって矛盾やおかしなところを修正したり、イベントによってはアプローチを変えたりもしています。(中略)なので、第1作を観たことがある人にとっては、要所,所のイベントは、『あ、あの話だ』って思われると思いますし、ストーリーの大きな流れ自体は変わっていません。 ただ、キャラクターも違っていますし、ドラマの部分や仕掛け自体も変わっていく感じです。 基本的にはそういう作り方をしています」
遠慮ではなく、敬意を表する気持ちで
今の目で旧作を見返すと、当時としては頑張っているSFアニメだが、やはり、色々と惜しいところも目立つ。 しかしフアンは、そんな惜しい部分は妄想を膨らませて脳内で補完することで、旧作を視聴してきた。 そこで、出渕はフアンならではの発想で、その脳内補完をビジュアル化し、「本当はこうしたかった」、「本当はこうなるはずだった」というヤマトを見せることを思いついたのである。
「僕自身、第1作目を愛しているので、遠慮ではなく、敬意を表するという気持ちで、今回のお話は作っています。実は最初の全体構成の段階で、原作者の西﨑(義展)さんにお見せしたところ、その中で3カ所だけダメだと言われた。なので、遠慮とは違いますが、その3カ所についてのみ修正しています」
好評につき、シリーズの続編が次々と製作
アニメ業界には、出渕を含め、ヤマトに導かれてこの業界に入った40代、50代のスタッフが多い。 だから、出渕がスタッフを勧誘する際には、こんな殺し文句で口説いた。「ヤマトで転んだオレたちで、ヤマトにケジメをつけよう。 コレやってみんなでリスタート(再出発)しよう」と。
その結果、リメイクは大成功を収め、新作映画「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」、2199の続編「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が製作され、現在は、さらにその続編「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」が今年2020(令和2)年秋公開を目指し、製作中となっている。

