
「ガールズ&パンツァー 劇場版」(ショウゲート)

映画公開の3年前から制作がスタート
「ガールズ&パンツァー 劇場版」は、2015(平成27)年11月に公開された、脚本:吉田玲子、監督:水島 努による日本の長編アニメーション映画である。 乙女のたしなみとして女子高生が戦車に乗って勝敗を競う「戦車道」で全国大会優勝を目指す主人公たちの奮闘ぶりを描いたテレビアニメ「ガールズ&パンツァー」の完全新作映画で、テレビ版最終話の後日談を描いている。 なお、劇場版の制作には、テレビアニメ放送中から取り掛かっており、約3年間が費やされている。
異例のロングラン上映で興行収入は25億円を突破
劇場版は全国77館で封切され、小規模上映ながら最初の週末2日間で観客動員数8万人、興行収入1.3億円となり、観客動員ランキングで第2位、興行収入ランキングで第1位を獲得した(いずれも興行通信社調べ)。 また、ぴあの初日満足度ランキング調査では満足度92.9点を獲得し第1位となった。 その後は、小規模ロードショーのアニメ映画として比較的順調に推移し、クチコミやtwitterで作品の評判が広まり、何度も足を運ぶリピーターが続出。 翌年2月には当初予定がなかった4DX上映も開始され、それに伴って興収や観客動員も伸び、3月上旬には興収15億円、累計動員数100万人を突破。 封切27週目となる5月21日からは劇場版のBlu-ray/DVD発売を記念して、来場者特典を伴う153館(うち新規上映38館)という異例の大規模再上映を実施し、動員ランキングで9位にランクイン。 その後も、新規上映や再上映が続き、中にはシネマシティのように封切初日から370日間のロングラン上映を行った映画館も存在した。

ガルパンの魅力はさまざま
作品自体は、テレビ、OVA、映画と立て続けに大ヒットとなった。 舞台となった茨城県大洗町には多くのファンが訪れており、町おこしや聖地巡礼という視点で語られたり、劇中に登場する戦車の精密な3DCGモデリングによる再現というミリタリー視点で語られたり、と様々な楽しみ方が存在する。 しかし、劇場版ならではの楽しみ方は、大音響への異様なこだわりである。
センシャラウンド 5.1ch重低音轟撃上映!?
「ガールズ&パンツァー」の本編中、主人公たちは様々なビンテージ級の名戦車を縦横無尽に操りつつ、戦車砲を撃ち合い、爆音だらけのサウンドとなる。 しかし、自宅のテレビやホームシアターで大迫力の戦車の走行サウンドや砲撃音、爆発音を楽しむのは難しい。 大音量だけならヘッドホンでも出せるが、それでは身体全体で音圧を感じるような迫力を味わうことは出来ない。 音の迫力を楽しむためには、独自の音響システムや高性能サブウーファーが導入された映画館で鑑賞するに越したことはない。
そこで音響監督を務める岩浪美和が、様々な劇場に足を運び、最適な音響調整を行った上で特別上映を実施するユニークな取り組みが行われ、来場者やファンの間で大きな話題となり、「あちらの映画館の音はああだった、こちらの音はこうだった」と、あえて別の映画館に足を運び、それぞれの持つ音の良さを楽しむという、これまでは見られなかった映画体験の盛り上がりを見せることとなった。
映画館で映画を見ることの楽しさを実感して頂くことに繋がれば、最高じゃないですか
映画好きが高じて音作りを仕事にしてしまった岩浪が、個別に音響調整を行うようになった経緯を語る。
「もともと、多くの映画館は素晴らしい音響システムを持っていて、良質なサウンドを実現してくれてはいるのですが、さらにほんのちょっと手を加えるだけで、映画の音がとても魅力的に感じてもらえるようになるんです。 以前は、作品が完成するまでが自分たちのやることで、あとは劇場にお任せ、というスタンスだったんですが、立川シネマシティの経験で、もう一歩踏み込んで制作者、劇場、お客様を繋ぐ事の重要性を感じました。 それで、できるだけ多くの映画館にうかがわせてもらい、その映画館にとってのベストな「ガールズ&パンツァー 劇場版」(のサウンド)を作り上げさせてもらおう、と思い立ったんです」
こうした岩浪の音響調整は、多くのファンが再び映画館に足を運ぶきっかけとなり、ロングラン上映の要因の一つにもなった。 爆音映画を楽しむという新たな映画鑑賞スタイルを生み出したのは、映画ファンとして大歓迎である。

