
「ドラゴンボール超 ブロリー」(東映)

原作の鳥山明が自ら関わった新作映画
「ドラゴンボール超 ブロリー」は、2018(平成30)年12月に公開された、原作・脚本 鳥山明、監督 長峯達也による日本の長編アニメーション映画である。 18年ぶりに復活した新作テレビアニメ「ドラゴンボール超」では、原作連載時は「劇場版と原作マンガは別物」というスタンスを取って、当時はアニメ制作にほとんどノータッチだった鳥山が漫画原作の続きとして初めてストーリー原案を作成。 テレビアニメ版は世界中で放映され、好評の内に同年3月で終了した。 しかし、本シリーズをこの後も繋げていくために新作アニメ映画として企画され、脚本やキャラクターデザイン、メカニックデザイン、舞台となる惑星の設定も鳥山が自ら手掛けた。
この作品、たぶんダメだろうなと予想していたら本当にダメだった
ご存じのように、ドラゴンボールは世界中で大人気のコンテンツ作品であり、2009(平成21)年にはハリウッドで、脚本をベン・ラムジーと監督のジェームズ・ウォンが手掛け、「DRAGONBALL EVOLUTION」として実写映画化された。 しかし、脚本があまりにも世界観や特徴をとらえておらず、ありきたりで面白いとは思えない内容だった。 製作総指揮の鳥山が注意や変更案を提示しても、製作側は妙な自信があるようであまり聞き入れてもらえず、出来上がったのも案の定のドラゴンボールとは言えないような映画だった。 全世界に公開されたが、制作費4,500万ドルに対し、60カ国以上の興行収入は約5,750万ドルに留まり、大失敗に終わった。

ドラゴンボールは、鳥山先生が関わらなくてはダメだ
集英社 ドラゴンボール室 室長 伊能昭夫によれば、ドラゴンボールのキャラクターは難しく、そのいじりかたや独特のセリフまわしは、鳥山本人じゃないと無理と証言する。
「誰も予想していないタイミングで“渾身のギャグ”が出たりする。 またその渾身のギャグが効いているわけですよ(笑)。 バトルに関しても、他の人に任せてしまうとどうしてもシリアスで凄惨なものになってしまう。 『ドラゴンボール』はやっぱりそういう世界観ではなくて、キャラクターに魅力があるからこそ、闘った時に感情移入も出来るし、応援もできるんだと思います」と話す。
全世界のファンにちゃんと届けたい
本作は、最初から海外市場を念頭に置いた作品創りが行われており、ハリウッドで失敗した実写映画のような独立した作品ではなく、ドラゴンボール超の世界観から繋がっている話となった。 鳥山自身が直接映画化に関わるだけでなく、キャラクターと背景は鳥山明の絵に、現代らしい新しさを加えるため、スタッフが変えられた。 また完成してから海外公開を検討すると時間がかかってしまうので、先にローカライズ(現地の言語への翻訳、吹き替えなど)の時間を考えてスケジュールが組まれた。
また、プロモーション展開でも大きなチャレンジを行い、世界的に有名な「サンディエゴ・コミコン」と「ニューヨーク・コミコン」のパネルディスカッションに参加し、予告編を全世界初公開。 「アベンジャーズ」や「スター・ウォーズ」などのハリウッドのメジャー作品が両コミコンで製作発表を行っていることから、同じようにハリウッド流のプロモーションを仕掛けた。 結果として、想像を絶する反響があり、北米はもちろん、中南米や欧州など他地域での興行に向けて最高のアピールができた。
世界興収1億ドルを突破
本作は、ASEANの4ヶ国を皮切りに全世界90の国と地域で公開。全米では、日本アニメ映画史上初のIMAX上映も行われ、公開初日に興行収入700万ドルを記録し、「全米初登場1位」を達成。 日本映画として「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」以来20年ぶりで、21世紀以降公開の作品では初の快挙を成し遂げ、公開5日間で興行収入2000万ドルとなり、米国で公開された日本映画の歴代3位となった。 なお、全世界の累計興行収入は2019年6月時点で1億ドル(約110億円)を超え、130億円を突破したのであった。

