
映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!(東映)

シリーズ歴代作品のクロスオーバー
「映画 プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」は、2009年(平成21)年3月に公開された、日本の長編アニメーション映画である。 当時最新作だった「フレッシュプリキュア!」はシリーズ第6作目であり、これは一大ブームを巻き起こした「セーラームーン」の記録である5作を上回っていた。よって、この2月から放送開始された最新作の人気を盛り上げて、確かなものとするため、東映お得意のオールスター映画が企画された。
具体的には、前年の「映画 Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪」で同時上映された、わずか5分の短編映画「ちょ〜短編 プリキュアオールスターズ GoGoドリームライブ」が好評だったため、「ふたりはプリキュア」、「ふたりはプリキュア Splash Star」、「Yes!プリキュア5」、「Yes!プリキュア5GoGo!」に加えて、放映中だった「フレッシュプリキュア!」を加えた延べ14人のプリキュアが世界観を超えて(統一させて)結集し、一つの敵に立ち向かうというストーリーで、プリキュアシリーズ歴代作品のクロスオーバー作品を作り上げた。
シリーズ過去最高の興収である10.1億円を達成
「子どもがいかに楽しんで、親が安心して観ることができるか、細かく考えてくれている。素晴らしい映像やストーリー構成を思いつけるかどうかが、監督の仕事なんです。そして、関わってくれるスタッフをいかにその気にさせて、最大限の力を発揮してもらうかも、監督の資質としてとても重要なんです」と語る、プリキュアシリーズの生みの親である鷲尾天プロデューサーが、大塚隆史を監督に指名し、その結果、シリーズ過去最高の興収である10.1億円を達成した。本作は今回だけの奇跡的なコラボレーション企画として制作が進められていたが、大ヒットにつき、以降は毎年3月に「プリキュアオールスターズ」が上映されるようになるきっかけとなった。

成長の伸びしろがない登場人物たちを動かす難しさ
本作のテーマは「出会い」であり、各作品を紹介したうえで最後の大集合が盛り上がるように制作されている。「映画には登場人物の成長が不可欠なのですが、この映画では歴代の完成されたキャラクターたちが集まってくるという、イレギュラーな作品なんです。最終ボスを倒した後の話の続きのつもりで物語を構成していますので、歴代のプリキュアたちは、もう何があっても動じないんですよ。つまり成長の伸びしろがない。もしあるとするならそれは、彼女たちが体験したことのない状況に出遭うことですが、それはもう無いと思っていた。でもそれを考えることが、この映画の全員集合の意味を見いだすことに繋がったんです。自分たち以外のプリキュアと出会うことで、今までにない新しい感情が生まれて心が動き、新しい物語の扉が開く。それに気付くことができた時、映画が完成しました」と、お話作りの難しさについて、大塚監督は語る。
自分の昔のわくわくの記憶を思い起こしているだけ
鷲尾プロデューサーによれば、大塚監督には稀有な才能があると云う。子どものころにどう思ってアニメを観ていたか、どこにわくわくしたかをずっと記憶して、それを表現しており、だから子どもたちに支持される。記憶に残っているものを、いかに正確に引き出して、作品に反映させることができるか。それは監督として大事な資質であり、体に刻まれたその記憶を、今のキャラクターや作品にアレンジしていくのは誰でもできる事ではないと称賛する。
しかし、当の大塚本人は以下のように謙遜する。「アニメに限らず子供の頃に遊んでいた時のドキドキとかね。まぁ自分の昔のわくわくの記憶を思い起こしているだけですけどね。昔のゴジラ映画「怪獣総進撃」とか、わくわくがハンパなかったですから、ちびっ子が大好きなプリキュアの「大集合映画」なんて楽しみすぎますよ。ハンパない企画です!」
子供の反応は正直であり、大人のように嘘がつけない。子供だましと子供向けは似て非なるものであり、子供向け作品だからこそ、ワクワクドキドキの夢のような作品でなければ、ヒットに結びつかないのである。

