
1966(昭和41)年〜1988(昭和63)
⑥「動乱」(監督・森谷司郎)
1980(昭和55)年1月15日公開。配給・東映

作品は第1部「海峡を渡る愛」、第2部「雪降り止まず」の2部構成からなる。二・二六事件を背景に、青年大尉(高倉)と、彼の部下の姉(吉永小百合)との悲恋を描いた作品。フィクションと現実の事件を巧みに織り交ぜながら、銃声と共に散った男女の愛を淡々と綴った名作。
雪のシーンは北海道で撮影された。厳寒の雪原で吉永が演技している時、高倉は1人、雪原で見守っていた。スタッフが暖をすすめると、吉永さんが終わるまで見守りたいと拒否。相手役が演じる様を、自分も体験するのが高倉流。
寒さで唇を青くしている健さんをみて、吉永が恐縮しきり。吉永は後日、記者会見で健さんの役作りに対する姿勢に感動し、「俳優としての覚悟を学んだ」と述べている。本作はこの年の興収ベスト10位に入った。また、第4回日本アカデミー最優秀主演男優賞を「遥かなる山の呼び声」の演技と合わせて受賞した。
⑦「遥かなる山の呼び声」(監督・山田洋次)
1980(昭和55)年3月15日公開。配給・松竹

映画の題名は西部劇の「シェーン」の主題歌曲名である。北海道中標津の酪農家に、嵐の夜、田島(高倉)が酪農を営む民子(倍賞千恵子)の元を突然訪れ、雨しのぎに、どこでも良いから泊めてくれと嘆願する。
あやまって人を殺して逃亡中の男と牧場を経営する未亡人、その子供との交流を描いた人情ドラマ。慎重に進む2人の恋を農作業と日常生活を、北海道の大自然の中で描く。
男が警察に捕まり刑務所へ連行される列車内で、護送員の目を気にして虻田(ハナ肇)が、向かい側の席に民子を座らせ、「民子が酪農を辞めて子供(吉岡秀隆)と中標津の町で暮らしながら田島を待つ」ことを、民子との会話として田島に聞かせる。
民子はそ〜と黄色いハンカチを田島に渡す。田島はそのハンカチで涙を拭きながら窓に顔を向ける。このシーンが泣かせる。山田演出の正に真骨頂である。
ロケの牧場所有者は当初ロケ地提供を、零細農家が映画になることを嫌って渋っていたが、倍賞との交流を通じ承諾した。倍賞はその後、毎年この牧場で、半年を私的に過ごすようになり、現在は北海道に居住するようになった。

⑧「駅 STATION」(監督・降旗康男)
1981(昭和56)年11月7日公開。配給・東宝

人と人とのめぐり逢いを、駅に停車する列車にたとえ、オリンピックのピストル競技選手でもある刑事(高倉)と3人の女の宿命的別離を描いていく。3部からなる作品。この映画、終始北海道が舞台の映画である。
銭函での妻(いしだあゆみ)との別離、増毛での殺人犯(根津甚八)の妹(烏丸せつこ)との出会いと上砂川での逮捕、そして増毛の飲み屋の女(倍賞千恵子)との一夜。留萌はその殺人現場、雄冬は刑事の故郷である。
脚本家の倉本聰が、あえて高倉健のために書き下ろしたもので、寒い北国の冬の風景の中に、高倉独特の感情を秘めた演技が秀逸。
増毛で高倉と倍賞が居酒屋で、大晦日の紅白歌合戦から流れる、八代亜紀の「舟唄」の歌を聞きながら、しっとりと杯を重ねるシーンは、長く語り継がれる名場面となった。
⑨「海峡」(監督・森谷司郎)
1982(昭和57)年10月16日公開。配給・東宝

およそ30年間に及ぶ、日本のビックプロジェクトと言われた青函トンネル工事にたずさわった人々の人生を、青函トンネル技術調査団員の阿久津(高倉)を中心に描いた作品。
自然と技術の対立のドラマを、竜飛岬の荒々しい海や自然の中で戦う男たちを丁寧な演出で描いている。東宝創立50周年記念作品。文部省特選映画でもある。
⑩「南極物語」(監督・蔵原惟繕)
1983(昭和58)年7月23日公開。配給・東宝

1958(昭和33)年2月、やむなき事情により日本の南極探検隊の飼っていたカラフト犬15匹が、昭和基地に残された。この作品は食糧の無い厳寒の南極で、ひと冬をのりきった2匹の犬、タロ、ジロの実話をもとにした物語。
彼らが厳しい自然条件の中をどう生き抜いたか。謎に包まれた部分に光を当てる。ある犬は氷の海に落ち、ある犬はシャチと闘って命を落とす。実話とドラマを、南極の雄大なる風景のなかで感動的に描く。この年、日本映画歴代興収ベストワンになった。

