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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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高倉健 主演作品21①

2019.11.29 by 西川昭幸

1966(昭和41)年〜1988(昭和63)年

「寡黙で、不器用」な男 高倉健

高倉は独立後、新境地を求めて多彩な映画に出演する。それがまた「寡黙で、不器用」な高倉キャラクターとマッチして、数々の名作を生み出す。追悼の意味も含めて東映退社後の代表作を年代順に触れておこう。

①「君よ憤怒の河を渉れ」(監督・佐藤純彌)

1976(昭和51)年2月11日公開。配給・松竹

「君よ憤怒の河を渉れ」の画像
君よ憤怒の河を渉れ(昭和51年)

巨大な権力の陰謀によって無実の罪をきせられた現職の検事(高倉健)が見えない敵を追って東京から北海道へ500キロの復讐の旅を行く。スケールの大きいアクション大作で、西村寿行原作の映画化。

彼を追う刑事に原田芳雄、恋人役に中野良子ら個性派が脇を固めている。高倉の東映退職後の第1作で、大映・永田雅一のプロデューサー復帰第1作でもあった。検事(高倉)を救うため、恋人(中野)が馬の群れを東京・新宿の深夜の繁華街を暴走させる撮影シーンが話題になった。

この映画は中華人民共和国(中国)でも1979(昭和54)年に「追捕」として、文化大革命後に初めて公開された外国映画となり、中国人の半分が観たと言われるほど超ヒットした。高倉健や中野良子は中国でも人気俳優となった。

②「八甲田山」(監督・森谷司郎)

1977(昭和52)年6月4日公開。配給・東宝

「八甲田山」の画像
八甲田山(昭和52年)

新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」の映画化。1902(明治35)年に青森の連隊が雪中軍の練習中に遭難し、210名の中199名が死亡した事件を題材に、一部創作を加えた作品。八甲田山を越えるため、死を賭けて行軍する男たちを力強く描いて、短い上映期間にも関わらず、この年の「人間の証明」「八つ墓村」の強力作品を押えて興収ベストワンになった。

冬の八甲田山ロケを敢行し、日本映画史上類を見ない過酷なロケとして有名になった。数名の俳優がその過酷さに耐えられず脱走した。主役級の俳優たちの出演料も決して高額ではなかった。

高倉もこの撮影で足に軽い凍傷を負った。高倉はこの作品に役者生命をかけた。製作期間の3年間は一切の仕事を断り傾注した。そのため無収入で、購入したばかりのハワイの家や京都のマンション、愛車ベンツなどを手放して生活していた。

また、高倉は酒を飲まないが、たばこは1日80本も吸うヘビースモーカーで、映画「八甲田山」が3年がかりの長期ロケとなり、成田山・新勝寺の完成願掛けで禁煙した。それ以来、終生タバコを断っている。

③「幸福の黄色いハンカチ」(監督・山田洋次)

1977(昭和52)年10月1日公開。配給・松竹

北海道を舞台に、刑務所帰りの中年男と若いカップルがそれぞれの愛を獲得するまでのロード・ムービー。新車を買って北海道に旅行にでた欣也(武田鉄矢)は、早速、朱実(桃井かおり)という女の子をナンパ。2人は旅を続けるが、途中で刑務所から出たばかりの中年男・勇作(高倉)に会う。

勇作は妻(倍賞千恵子)に〝もし俺を待っていてくれるなら、家の前に黄色いハンカチを下げておいてくれ”という手紙を書いていた。ラストへと3人を乗せた車は、北海道の風景と人物のカットバックを効果的に使い物語が進展する。

「幸福の黄色いハンカチ」の画像
幸福の黄色いハンカチ(昭和52年)

撮影で勇作が刑務所から出て来た後、食堂で食事をするシーンがある。その収録で、ラーメンと、かつ丼を美味しそうに食べる演技が、一発でOKが出た。あまり見事だったので山田監督が尋ねると「この撮影のために2日間何も食べませんでした」と言葉少なに語り、スタッフを唖然とさせた。

また欣也役の武田鉄矢が好演して話題になった。北海道ロケは1977(昭和52)年3月14日、夕張、札幌からスタート。札幌では雪が少なくビルの陰にのこっている雪を集めて間に合わせた。更に5月、釧路、網走、阿寒、陸別、帯広、十勝清水、富良野、夕張と27日間掛けて撮っている。

この作品で、キネマ旬報ベストワン、第1回日本アカデミー最優秀主演男優賞、ブルーリボン主演男優賞、毎日映画コンクール男優演技賞、報知映画賞主演男優賞、などを受賞した。

④「野生の証明」(監督・佐藤純彌)

1978(昭和53)年10月7日公開。配給・東映

「野生の証明」の画像
野生の証明(昭和53年)


150万部を突破した、森村誠一のベストセラー「野生の証明」の映画化。角川映画の第3作目で、薬師丸ひろ子(当時14歳)のデビュー作でもある。人間の愛と尊厳を証明しようとした男のハードな生き方を描く、壮大なアクションドラマ。

国家権力によって比類なき殺人技術を叩き込まれた男(高倉)が、暴力によって不幸に陥った1人の少女(薬師丸)の中に、自らの人間性の回復を託そうとする。だが、その少女さえも奪われた時、男の中に野生の闘いの血が駆けめぐる。

クライマックス・シーンの壮絶なアクションは、実物の戦車や火器、ジェット・ヘリを使いアメリカ・カリフォルニアの米軍演習地で撮影され、製作費12億円も話題になった。この年の興収ベストワン作品である。

⑤「冬の華」(監督・降旗康男)

1978(昭和53)年6月17日公開。配給・東映

「冬の華」の画像
冬の華(昭和53年)

倉本聰脚本による「足長おじさん」の話である。加納(高倉)は渡世家業の義理から松岡洋子(池上季実子)の父親を殺やめた。この罪で15年刑務所生活を送る。出所後は堅気になることを誓っていた。その一方、オジさまと慕う洋子に本当の事を言えず不安を感じていた。

そうした時、自分の親分がだまし討ちに会い殺され、復讐をせざるを得なくなる。はやる坂田(北大路欣也)を抑え、自ら裏切り者を始末する決心をする。珍しくこの作品、東映が1本立てで上映した。

東映のスクリーンから遠ざかって3年目だったので、往年の高倉健を知るファンは、内容に戸惑いを感じ、興行的には不振だった。新境地に挑んだ作品だっただけに悔やまれた。

(高倉健主演作品21②へ続く)

拙著<美空ひばり最後の真実>が発売中です。

Filed Under: 昭和(後期) Tagged With: 佐藤純彌, 倉本聰, 山田洋次, 森谷司郎, 降旗康男, 高倉健

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著者紹介(西川昭幸)

1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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