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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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1983(昭和58)年の世相

2019.11.18 by 西川昭幸

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1966(昭和41)年〜1988(昭和63)年

〈日本中が「おしん」に涙〉

4月4日、NHK連続テレビ小説「おしん」が放送され最大のヒットとなった。回を重ねるたびに人気は上がり平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%。「おしんシンドローム(おしん症候群)」「おしん横綱」などの流行語が生まれるほどのブームになった。数々の苦難に立ち向かう健気な主人公の姿に日本中が涙した。

〈東京ディズニーランド・オープン〉

4月15日、夢と魔法の王国、「東京ディズニーランド」が千葉県浦安にオープン。けた違いのスケールは人々を圧倒。アトラクションからサービスまで、米国生まれのテーマ・パークは日本の娯楽文化に革命を起こした。

外国人からは、成田空港とディズニーランドは千葉県なのに、東京と名前が付くのはペテンだとか、いろいろ疑問の声も上がったが、千葉県では商売にならず苦渋の名称だった。

〈大韓航空機撃墜事件〉

9月1日、ニューヨーク発アンカレジ経由ソウル行の大韓航空007便が、サハリン西方で消息を絶った。韓国中が大騒ぎに。夜になってアメリカがソ連軍機によって撃墜されたと発表。同機には乗員29人を含む269人が搭乗しており、全員が死亡したとされる。所定の進路を大きくそれたとはいえ、多数の乗員を乗せた民間航空機をソ連が撃墜したことで、国際的な非難が集中した。ソ連が撃墜を認めたのは5日後の9月6日だった。

〈その他の出来事〉

2月12日、神奈川県警が、横浜市内の連続ホームレス殺傷事件(死者1名)で、中学生ら10人を逮捕する。5月26日、秋田県沖で日本海中部地震(M7.7)が起き、津波などの死者行方不明104人が出る。12月8日、警視庁が、銀座の愛人バンク「夕ぐれ族」を売春周旋容疑で摘発した。

記録的大ヒット「南極物語」

1983(昭和58)年7月23日に公開された「南極物語」は、老若男女あらゆる客層を吸引し、日本映画史上、初の58億円という配給収入を記録した。この記念すべき映画は、フジテレビ、学習研究社、蔵原プロダクションの3社の共同で製作され、日本ヘラルド映画と東宝が共同配給した。

「南極物語」の画像
南極物語/ポスター(昭和58年)

鎖につながれたまま、南極の氷原に取り残された

1959(昭和34)年1月、奇跡を知らせるニュースは日本中を感動させた。南極の昭和基地に取り残された15匹のカラフト犬のうち、2匹が生存していたのだ。

タロとジロは、北大名誉教授 犬飼哲夫らが道内から選んだ名犬だった。1957(昭和32)年から翌年まで南極観測隊第1次越冬隊の「犬ぞり」で活躍したカラフト犬のうちの2匹だった。

観測隊が交代期の1957(昭和32)年2月、昭和基地付近は厚い氷で覆われ、当時の観測船「宗谷」の力では、どうにも近づくことができなかった。このため止む無く、15匹のカラフト犬は鎖につながれたまま、南極の氷原に取り残された。

「タロとジロは生きていた!」

だが、翌々1959(昭和34)年1月、第3次観測隊が昭和基地に到着した時、ブリザードの吹きすさぶ南極で1年間を生き抜いてきた2匹が、ヘリコプターの下に駆け寄って来た。ほかの13匹のうち6匹は行方不明、7匹は無残にも餓死していた。

映画「南極物語」は、このタロとジロを主役とした物語である。カラフト犬たちに食事も与えず、そのうえ鎖につないで置きざりにしなければならなかった男たちの苦痛とこだわり…。

しかし、犬たちは一体、酷寒の南極でどうやって生き抜いたのか。その謎は永久に解けない。タロとジロ、そのほかの行方不明の6匹が、どのようにして生きていたのか、だれも見た者がいない。その謎を追うドラマでもあった。

命がけの現地ロケ

「南極物語」の監督は、「キタキツネ物語」「象物語」など、動物映画ではベテランの蔵原惟繕。主演は高倉健と渡瀬恒彦。だが、主演の高倉健は「八甲田山」以来、寒冷地を舞台にした映画に出ずっ張りで、体力に自信がないと躊躇していたが、製作発表間際になってようやく、出演を承諾する。

撮影は南極、北極を往復し、京都、稚内、紋別と延々14万キロにも及び、足かけ3年掛りの撮影だった。この間、さまざまなアクシデントが起こっている。

まず蔵原監督が、南極で撮影中にロッ骨を折るという怪我をした。高倉健も、風速70m、マイナス30度というブリザードに襲われ、凍傷で右耳がもげそうになるなど、九死に一生を得る。

「もしかして…」高倉は死を意識したという

これは、ニュージーランド隊のスコット基地から、約75キロ離れた難所でのこと。雪上車の中でブリザードの過ぎ去るのを待つあいだ、「もしかして…」と、高倉は死を意識したという。

さて、映画の主役の犬だが、カラフト犬は、撮影を始めた頃にはその数がわずか4匹しか残っていなかった。そこで、エスキモーの飼っているハスキー犬が、ピンチヒッターで登場。ただ、エスキモー語しか理解しないので、訓練、本番とスタッフが頭を抱えた。

映画配給史に残る快挙

「南極物語」は完成した。そして、58億円という映画配給史に残る快挙を成し遂げた。しかし、この映画には、最初から日本映画の配給記録を達成すべく、35億円という目標が置かれていた。フジテレビというテレビ媒体。学研という雑誌媒体に乗って、宣伝を担当した日本ヘラルドは必死だった。

映画の製作費に匹敵するほどの宣伝費-それは角川映画が敷いたレールであった。あらゆる媒体を利用した大量宣伝を行えば、観客を動員できるという1つの証明でもあった。「南極物語」は、フジテレビが次に製作する「ビルマの竪琴」「子猫物語」と続く、1980年以降の映画製作の起点となった作品である。

Filed Under: 昭和(後期) Tagged With: フジテレビ, 学習研究社, 日本ヘラルド映画, 東宝, 渡瀬恒彦, 蔵原プロダクション, 蔵原惟繕, 高倉健

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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