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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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TVアニメのリメイクではなく、リビルド(再構築)

2019.10.27 by 西川昭幸

「ヱヴァンゲリヲン」の画像
公開当時のティザー・ポスター

徹底的に追い込まれて、開き直りからスタート

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」は、2007(平成19)年9月公開の、原作・脚本・総監督 庵野秀明による、テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を踏まえた新作4部作の第一弾。公開後2日間の観客動員数は23万6158人、興行収入は2億8000万円で、最終興行収入は20億円というヒットを飛ばした。

本作の製作経緯を、庵野は以下のように語っている。「『エヴァ』じゃないものを作ろうとしているのに、なんで『エヴァ』にしかならないんだろうと。このジレンマがずっと続いて…。でもあるとき気がついたんです。それならいっそ『エヴァ』をやったほうがいいじゃんと。どうせ『エヴァ』にしかならないんだったら、『エヴァ』をもう一回やってみようと。それで始まったのが新劇場版ですね」

製作委員会方式とは

ところで、現在制作されている日本映画の大半は、複数の企業が出資して作品の制作費をねん出する「製作委員会」制度がとられている。製作委員会は、いわゆる「会社」ではなく、日本の民法上の「任意組合」にあたる組織で、製作に必要な資金を複数の出資者から募り、これを原資に作品を製作し、完成した作品の著作権を運用するための、事業母体として組成される。製作委員会は、作品の製作資金を分担で出資するかわりに、各企業は、作品に関する商品企画・販売・宣伝を行い、成功した場合は報酬を分け合い、失敗した場合も補償し合う。つまり、責任と保障の分担でリスクを減らす合理的なシステムである。

卵は一つのカゴに盛るな

当時のアニメ業界は、メガヒット作はあっても、まだまだヒット作は少なく、深夜アニメ放送枠も無かったので、オタク向け作品のアニメ化製作資金を集めるのは困難だった。当時、キングレコードの大月俊倫プロデューサーは、どの作品のアニメ化がヒットするかわからないので、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということで、数多くの作品に出資するリスクを回避する分散投資形のアニメビジネスを行っていた。その中での大ヒットが、テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の成功である。

製作委員会方式の功罪

しかし、製作委員会方式は、作品に関する商品企画・販売・宣伝など、ビジネスを分担した手数料収入による投資回収を前提として出資しているため、「著作権が曖昧」「決断が遅くなりがち」「作品がヒットしても制作会社側への利益配分が少ない」「円盤の売り上げが落ちて、ビジネスモデルが成り立たない」という批判がある。そこで、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズでは、製作委員会方式をやめた。

テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の制作会社だった株式会社ガイナックスの取締役を辞した庵野秀明が、本作の企画・製作・共同配給会社となる株式会社カラーを設立。制作・宣伝・製作のクレジットは、「カラー」1社のみで、同社が作品の出資から宣伝、配給までのすべてを担っていた。まさに本作は庵野監督とカラーの「自主制作映画」として作られ、公開されたのである。

自主制作のメリット

自主制作の場合、作品による収益の管理が可能となり、使い道は会社側で決められるため、得た利益は次回作の制作費に充てるといった使い方など、自由に管理できる点がメリットである。一方では、資金を自力で調達しなければならず、リスクの分散化が難しく、さらに、巨大な宣伝媒体でもあるテレビ局などの協力が得られないデメリットもある。しかし、本作の場合は、大ヒットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」というブランド資産があった。

庵野は以下のように語っている。「それはエヴァのタイトルのおかげです。コンテンツとして大丈夫だと感じていました。しかも、最初はそれほどお金を掛けていないのです。『このぐらいならば投資を回収できる』という、最低のリクープライン(採算ライン)で作っています。興行収入が入ることで、次の作品の製作費を少し潤沢にすることができました。さらに次の作品が当たったのでもう少し製作費に回すことができた。そうして、投資と回収を繰り返すことで、会社を伸ばすことができ、スタッフの報酬を少しは増やすことができたのです」。

キャラクタービジネスゆえの一石二鳥の展開

プロモーションとしてアニメ作品を使う場合、企業は作品のアイコンとして登場キャラクターを使い、各社はロイヤリティーや協賛金を支払う。製作委員会方式の場合、競合は排除されるが、本作の場合、協賛する企業は全て同列に扱われ、競合企業や広告代理店も肩を並べることが当たり前になっている。キャラクタービジネスによる展開が、そのまま作品の宣伝にもつながり、キャンペーンやコラボ商品そのものが話題作りとなり、作品を通じて、各企業が個別に立ち上げた企画同士が緩やかに連携をとり、競うように盛り上がっていく。

しかし、本作の成功の後でも、自主制作による映像制作は、なかなか行われておらず、ヒット作は少ない。残念ながら、筆者の知る限り、後に庵野が総監督を務めた東宝株式会社単独出資により製作された「シン・ゴジラ」くらいであろう。

Filed Under: アニメ, 平成 Tagged With: 庵野秀明, 株式会社カラー, 製作委員会

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著者紹介(西川昭幸)

1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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