
1951(昭和25)年〜1955(昭和29)年
講習記録ベストテンあれこれ
映画には、いろいろなベストテンがある。しかし、その時代や世相を反映するのは、観客の趣向が分かる興収記録だろう。それ以外は、選ぶ人の思考が入り様々だ。
1953(昭和28)年の日本映画興収ベストテンを見てみると、①君の名は・第2部(松竹)、②君の名は・第1部(松竹)③ひめゆりの塔(東映)④太平洋の鷲(東宝)⑤戦艦大和(新東宝)⑥花の生涯(松竹)⑦夏子の冒険(松竹)⑧花の講道館(大映)⑨学生社長(松竹)⑩花の喧嘩状(大映)である。この年「君の名は」が圧倒的動員力を誇っていた。
こちらは観客が選んだ映画ベストテンだが、しかしこれが、評論家などが選ぶ、キネマ旬報「日本映画ベストテン」は、次のような結果であった。
①にごりえ(文学座、新世紀映画)②東京物語(松竹)③雨月物語(大映)④煙突の見える場所(8プロ、新東宝)⑤あにいもうと(大映)⑥日本の悲劇(松竹)⑦ひめゆりの塔」(東映)、⑧雁(大映)⑨祇園囃子(大映)⑩縮図(近代映画協会、配給・新東宝)となる。
大衆が趣向する作品と関連しない
同じベストテンでも大きな違いが有るのが、お分かりと思う。評論家などが選んだベストテンの中で観客が好んで観た作品は「ひめゆりの塔」しか入っていない。
キネマ旬報ベストテンは、作品の質評価で、芸術性に優れているか、作品としての主義や主張、社会性などが基準になる事が多い。必ずしも大衆が趣向する作品と関連しない。そのため業界では「キネマ旬報の賞を取った作品は当たらない」との風説があり、それは今でも生きているようだ。
大衆が欲する作品と評論家が選ぶ作品が、あまりにも違い過ぎる。そう感じるのは筆者だけだろうか。「良い映画とは何か!」その基準がいつも問われるところである。


好きな俳優のベストテン
この年、全道労協が1952(昭和27)年7月〜1953(昭和28)年9月迄を対象とした「映画ファンアンケート」を実施した。その中で「貴方の一番好きなスターは誰ですか」の質問項目が有り、俳優のベストテンが挙がっているので、記しておきたい。
女優の部=①原節子②木暮実千代③津島恵子④高峰秀子⑤山田五十鈴⑥久我美子⑦京マチ子⑧香川京子⑨淡島千景⑩岸恵子。
男優の部=①佐分利信②三船敏郎③山村聰④長谷川一夫⑤笠智衆⑥佐田啓二⑦宇野重吉⑧佐野周二⑨池部良⑩森雅之、である

