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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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日本では育ちにくいアクション映画

2019.09.23 by 西川昭幸

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1966(昭和41)年〜1988(昭和63)年

女性アクションのパイオニア 

この空手ブームに彗星のように現れた、アクション女優がいた。志穂美悦子である。志穂美は千葉真一が主宰する「ジャパンアクションクラブ(JAC)」の秘蔵っ子で、1973(昭和48)年から、テレビの子供番組や、脇役で出演していた。

空手映画が当たったので、東映では千葉に続く格闘映画として、ヒロインが活躍する“女ドラゴン”の企画を進めていた。その主役に韓国の武術家で、香港映画で「女活殺拳」やブルース・リーの「ドラゴンヘの道」「死亡遊戯」などに出演していたアンジェラ・マオを使う予定だった。

ところが話が纏まらない。そこで千葉が志穂美を強く推薦する。当時18歳だった志穂美の抜擢に東映では意見が割れたものの、志穂美は映画出演3作目で主役の座を射止める。

「志穂美悦子」の画像
志穂美悦子(昭和56年)

志穂美悦子 一躍スターダムに駆け上る

第1作「女必殺拳」(監督・山口和彦)は1974(昭和49)年8月31日、若山富三郎主演の「極道VSまむし」(監督・石井輝男)の併映で公開された。これが「極道」より、客の反応が良かった。

続いて「女必殺拳 危機一髪」(監督・山口和彦)、「帰って来た女必殺拳」、「必殺女拳士」、「女必殺五段拳」(監督・小沢茂弘)と主演作が撮られた。その間、千葉真一の空手物にも出演し、一躍スターダムに駆け上る。

日本に初めて本格的なアクション女優が誕生したと話題になり人気を得た。その後、「柳生一族の陰謀」「宇宙からのメッセージ」「蒲田行進曲」「里美八犬伝」「上海バンスキング」「二代目はクリスチャン」「男はつらいよ」に出演し、テレビでは「影の軍団」シリーズ「柳生あばれ旅」シリーズ等がありトップ女優へ成長する。

突然に歌手の長渕剛と結婚

しかし、1987(昭和62)年8月29日、突然に歌手の長渕剛と結婚して引退。32歳の絶頂期の引退でファンを残念がらせた。この後、日本には女性のアクションスターは誕生していない。

アクション・ファンの筆者は、身体の切れが良くて、運動神経の良い志穂美のようなアクション女優はもう、日本では生まれないのではと懸念する。

世界一の格闘技女優は、ミシェル・ヨー(「ポリスストーリ」「007トゥモロー・ネバー・ダイ」「グリーン・デスティニー」)だが、志穂美は、ミシェル・ヨーに引けを取らない女優の素質があった。

志穂美はミシェルより7歳年上である。その引退が惜しまれた。空手映画は、大映・日活でも製作されたが、圧倒的ブームは、1976(昭和51)年の前半で頭打ちとなる。3年半の短い命だった。

「 JACメンバー」の画像
JACメンバー(平成元年)

アクションとは元々“活動”するの意味だが、日本では何故か格闘や立ち回り等を指している事が多い。映画のアクションスターはそうした意味で使われている。

俗に言うアクション映画は世界各地で盛んに製作されているが、日本映画は少ない。いや、殆ど無いと言っても過言ではない。

理由はいろいろあるが、農耕民族の島国日本では、争いを嫌う土壌や思想が根底にあるのが原因のようだ。フランスと似ている。アメリカ、中国、韓国などは日常的に戦いが生活であり、歴史であった国民との違いもある。

日本のアクション映画の代表作と言えば「七人の侍」(監督・黒澤明)、「用心棒」(監督・黒澤明)、「将軍家光の反乱 激突」(監督・中島貞夫)など。殆ど時代劇で、現代劇は岡本喜八監督の「独立愚連隊」シリーズ(東宝)と、織田裕二主演の「ホワイト・アウト」(監督・若松節朗)などと少ない。

ジャパンアクションクラブ(JAC)

アクション映画はアメリカの独壇場で多くの秀作を残しているが、日本ではアクション映画は育ちにくい。そうした中、頑張っているのが、ジャパンアクションクラブ(JAC)だ。

JACは1970(昭和45)年、俳優・千葉真一が「世界で通用するアクションスター、スタントマンを育成・輩出したい」という願いから東京都中野区に創設された。

当初は苦労したが、1973(昭和48)年頃から、千葉真一主演の格闘映画で、共演した第一期生らが徐々に業界で認知されて行く。

また、テレビの「仮面ライダー」等の子供番組がJACの需要に拍車をかけた。ちなみに真田広之、志穂美悦子、堤真一、伊原剛志、春田純一はJAC出身の俳優である。

JACの全盛期は1980(昭和55)年〜1988(昭和63)年位までがピークで、1984(昭和59)年4月、新宿コマ劇場でJACミュージカルとして「愉快な海賊大冒険」、1985(昭和60)年4月「酔いどれ公爵」、1986(昭和61)年4月「スタントマン愛の物語」など1ヶ月間の長期公演が出来るまでに成長する。

研修生の応募が1万人近く有った

研修生の応募が1万人近く有ったのもこの頃。訓練は厳しかった。通常の発声訓練、殺陣、空手、乗馬、体操は元より、夏(水泳)、冬(スキー)の集中合宿でも鍛えられた。しかし、先に記したようにテレビ以外、年々、映画(特に時代劇)の需要が少なくなり、研修生も激減していく。

「リメインズ・美しき勇者たち」の画像
リメインズ・美しき勇者たち(平成2年)

そうした中、JAC創立20周年記念として1990(平成に)年2月10日公開の映画「リメインズ・美しき勇者たち」(監督・千葉真一、監修・深作欣二)を製作している。主演は真田広之を中心に、JACメンバーが総出演。この映画で村松美香が新人賞を受賞した。

その後、部員の生活を支えるため、1991(平成3)年7月、日光江戸村と合併し、テレビ、映画の製作などを行うが、1996(平成8)年10月、千葉がアメリカへ活動の場を移したこともあり組織が分裂。現在は千葉真一主宰のJACと、分裂したメンバーの「ジャパンアクションエンタープライズ(JAE)」の2つで活動を行っている。

部員の鍛錬と努力には頭が下がった

著者は、1972(昭和47)年9月15日、JACの北海道の合宿費を捻出するため「JACフェステバル」公演を札幌市民会館で主催したことがある。また千葉指導の下、北海道伊達市で乗馬訓練や洞爺湖で集中合宿等を手伝ったが、部員の鍛錬と努力には頭が下がった。

現在、「007」シリーズ、トムクルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」、中国・韓国の武闘映画、特にCGより生身の肉体を使った作品等が大人気で、世界的にアクション映画は万国共通に受け入れられる。

映画の共通語は「活劇」というアメリカ監督もいた。日本でもハードボイルド・アクション映画を熱望している人は少なくない。JACのこうした人たちが、アクション映画で陽の当たる日が来ることを願わずにはいられない。

Filed Under: 昭和(後期) Tagged With: 千葉真一, 志穂美悦子, 東映, 真田広之, JAC

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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