
1951(昭和25)年〜1955(昭和29)年
ハリウッドの立体映画公開
新手の映像メディア、テレビへの対抗策として大画面の“ワイドスクリーン”とともに、ハリウッドが考案した立体映画が上映された。4月、モノクロ版ギャング映画「恐怖の街」と、カラー版、冒険活劇「ブワナの悪魔」などがそれ。いずれもアメリカのナチュラルヴィジョン社が開発した、観客が偏光メガネをかけて鑑賞する方式のもの。

それぞれ遊園地のジェットコースターでの打ち合い、猛火に包まれる火災シーンなど見せ場を用意して立体効果を狙った。その結果、物珍しさも手伝って、正月興行を上回る観客を動員。しかし、劇場側にとっては偏光眼鏡購入などで経費がかさんだこと、更に内容がややお粗末だったため、その後しばらく製作・公開されることはなかった。

でも最近、また3D映像として上映される映画が多くなっている。しかし、立体映画は、なぜか昔からあまり進歩していない。筆者は1994(平成6)年、立体映画を日光江戸村撮影所でソニーと提携し「激刃真田十勇士」と「水戸光圀隠密秘聞」の二作品をプロデユースしたことがある。
映像は人間の眼の錯覚を利用したもので、画面の中心から45度の視覚以外は、立体効果が得られない。立体(3D)映画には、アナグリフ式、直線偏光フィルター方式、液晶シタッター方式などあるが、原理は全く同じで、最近の3D映像を見ても、その変化のなさに呆れた。
入場料の高い洋画 不振の波被る
1953(昭和28)年が明けて、いよいよ正月興行。この年の正月興行は、興行界の期待通り久々のクリーンヒットとなった。どこの映画館も、連日超満員という盛況ぶり。しかし、盛況の中にも大きな異変が起きていた。それは洋画の不振だった。新聞は洋画の不振を、「洋画はなぜ高いか」という問題で取り上げた。おかげで洋画は、ますますピンチとなった。
だが実際のところ、この年から入場税は5割値下げされることが決まり、邦画は、1月20日から一斉に料金値下げを実施した。これに対して洋画専門館は、じっと沈黙。けれども1月の末になって、ついに、ある洋画専門館が値下げを実行。ここにきて、その足並みは大きく乱れ始めた。
“洋画はなぜ高いか”、それなりの理由とカラクリがある。値下げ出来ないのは、配給会社への気がねがその主な原因であった。値下げを断行したくとも、そんなことをすると、良い作品を配給して貰えない。いかに劇場といえども、大作、秀作が来なければ客足はぐんと落ちてしまう。
もう1つの大きな理由は、MG(最低保障、フラットともいわれる)システムである。大作ともなると、洋画の場合、ほとんど、このMGがつく。つまり客足が多かろうと少なかろうと、高額のMGを取られるのだ。そうしたシステムが、洋画専門館の自由を奪い、身動きの取れない状態に追い込んでいた。
「洋画の入場料はなぜ高いか」という論議は、結局、プリント代が高いからで、そうした中、洋画のプリント代(配給費)値下げ運動を起こした地区もあったが、結局素材を持っている配給会社には勝てなかった。

