• Skip to primary navigation
  • Skip to main content
  • Skip to primary sidebar
  • Skip to footer

日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

  • 令和
  • 平成
  • 昭和(後期)
  • 昭和(中期)
  • 昭和(初期)
  • 大正
  • 明治
  • アニメ
  • よもやま話

国策として作られた満映の大スター李香蘭

2019.09.04 by 西川昭幸

0

1935(昭和10)年〜1944(昭和19)年

李香蘭主演の国策映画人気

国策映画はひとえに、新人女優・李香蘭に負う所が多かった。李香蘭主演映画は、中国人女優と思われていたので中国人にも人気があった。李香蘭は満州、日本の両国を跨いで活躍する。しかし、この満映も1945(昭和20)年10月、日本の敗戦と同時に閉鎖する。

満映で働いていた日本人家族は、ロシア軍と八路軍(中国共産党軍)から追われ、理事長・甘粕正彦が仕立てた列車などで敗走する。その後、理事長・甘粕正彦は8月20日、事務所で青酸カリで服毒自殺する。

この理事長、過去にアナキスト大杉栄と、その妻、伊藤野枝を殺害した甘粕事件の首謀者で日本で服役していた。その後、満州国民政部警務司長や満州国の謀略機関の親玉として君臨し、悪名を馳せた歴史上の人物である。

日本人であることを明かさなかった

では満映の大スター李香蘭はどんな人だったか少し触れておこう。1920(大正9)年、旧満州(中国東北部)生まれ。13歳の時、奉天放送局にスカウトされ、歌手デビューした。日本人だったが、家族ぐるみでつきあいのあった中国人有力者が付けてくれた「李香蘭」を芸名にした。1938(昭和13)年、満映の専属女優になる。

「親日的な中国女優」として、日本政府の中国支配の片棒を担がされた。そして、日本の植民地政策の「日満親善」「五族協和」を体現するヒロインを次々と演じた。

とりわけ長谷川一夫と共演したラブロマンス「白蘭の歌」(1939年)、「支那の夜」(1940年)、「熱砂の誓ひ」(1940年)は大陸3部作として大ヒットした。

一方歌手としても大人気で、「蘇州夜曲」(1940年)、「夜来香」(1951年)などのヒット曲も生まれた。1940(昭和15)年に東京・有楽町の日劇で開かれたリサイタルでは、観客の行列が日劇を7周り半も取り巻き、警察官が出る騒ぎに。

その間、一貫して日本人であることを明かさなかったため、終戦時には、日本に協力した中国人として銃殺処罰されそうになった。裁判で日本の戸籍簿を提出し日本人であることを証明して謝罪。1946(昭和21)年、日本への帰国が許された。

祖国日本と母国中国の懸け橋として奔走

戦後は山口淑子として日本映画に登場。1950(昭和25)年、谷口千吉監督「暁の脱走」や黒澤監督「醜聞 スキャンダル」などに出演。ハリウッド映画「東は東」などにも出演した。

1951(昭和26)年、彫刻家のイサム・ノグチと結婚したが、4年あまりで離婚。その後、外交官の大鷹弘と1958(昭和33)年に再婚。一度は芸能界から引退する。

しかし、山口は「戦争のために国策として使われた」感は拭えず、後年、ジャーナリストや政治家として世界の戦地に赴き、パレスチナ問題などに関わった。

1969(昭和44)年からテレビのワイドショー「3時のあなた」の司会役として、また1974(昭和49)年の参議院全国区に自民党から立候補して、議員を3期務めることになる。

その間、祖国日本と母国中国の懸け橋として奔走するも、2014(平成26)年9月7日、心不全のため逝去。94歳だった。

山口は戦時下を中国・日本で活躍し、女スパイ川島芳子とも親交があったので、一時、両国からスパイと疑われていたこともあった。

山口は後年、自伝を書くのに、自分の出演作を見ていなかったので、映画「支那の夜」などの作品を見ることが有り、「私の愚かさ、無知が口惜しくて涙が止まらず、3日3晩眠れませんでした」と語り、「大陸から日本をどう見るかという視点を常に意識していた」と、議員秘書だった磯村順二郎が回顧している。

まさに山口淑子は戦争社会の被害者でもあった。また、4年間、夫として生活した、世界的彫刻家イサム・ノグチは札幌とも縁が深く、東区にある広大な「モエレ沼公園」はイサム・ノグチが設計したもの。

公園全体の彫刻作品としては日本屈指である。併せて大道り公園や南区の芸術の森美術館で、彼の作品がいつでも自由に観られる。

Filed Under: 昭和(初期) Tagged With: 山口淑子, 李香蘭, 満映

Primary Sidebar

著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

四方山話

「大林宣彦監督」の画像

「映像の魔術師」大林宣彦監督死去

2020.04.16 By 西川昭幸

「理想の母」を演じた名女優・八千草薫

2020.04.04 By 西川昭幸

98歳「日本一のおばあちゃん役者」他界 2010(平成22)年

2020.04.03 By 西川昭幸

他の四方山話記事を読む

アニメ

自分の感情をストレートに出すだけが人間ではない

2020.04.01 By 西川昭幸

日本映画に対するオマージュではなく、生きようとしている人に対するオマージュ

2020.03.24 By 西川昭幸

この胸が詰まっている感じに名前を付けてください

2020.02.24 By 西川昭幸

他のアニメ記事を見る

タグ一覧

スタジオジブリ (5) トーキー映画 (5) マキノ雅弘 (5) 三船敏郎 (14) 中村錦之助 (4) 今井正 (8) 勝新太郎 (5) 原節子 (5) 吉永小百合 (5) 大映 (9) 大河内傅次郎 (4) 宮崎駿 (6) 小津安二郎 (5) 尾上松之助 (8) 山本嘉次郎 (3) 山田洋次 (8) 市川崑 (6) 市川雷蔵 (4) 新東宝 (5) 日活 (19) 木下恵介 (7) 東宝 (66) 東映 (48) 松竹 (43) 栗島すみ子 (3) 梅宮辰夫 (3) 森谷司郎 (6) 森道夫 (6) 森雅之 (3) 活動写真 (15) 深作欣二 (5) 渥美清 (6) 片岡千恵蔵 (4) 牧野省三 (5) 石原裕次郎 (7) 稲垣浩 (5) 美空ひばり (8) 衣笠貞之助 (4) 角川映画 (4) 角川春樹 (5) 阪東妻三郎 (10) 降旗康男 (4) 高倉健 (12) 高峰秀子 (6) 黒澤明 (21)

Footer

新刊紹介

最近の投稿

  • 平成14年の日本映画年間ベスト10、No.1,2,3 2020.06.18
  • 平成13年の日本映画年間ベスト10、No.7,8,9,10 2020.06.18
  • 平成13年の日本映画年間ベスト10、No.4,5,6 2020.06.01
  • 「蜜蜂と遠雷」(配給/東宝) 2020.05.23

検索

Copyright © 2021 · 日本映画100年史