
1992(平成4年)年
1992年(平成4年) 配収ベスト10
(一般社団法人日本映画製作連盟より)
1位/紅の豚(東宝)
2位/おろしや国酔夢譚(東宝)
3位/ドラえもん・のび太と雲の王国(東宝)
4位/ドラゴンボールZ・激突100億パワーの戦士たち(東映)
5位/ミンボーの女(東宝)
6位/ドラゴンボールZ・極限バトル三大超サイヤ人(東映)
7位/遠き落日(松竹)
8位/ゴジラVSキングギドラ(東宝)
9位/男はつらいよ・寅次郎の告白(松竹)
10位/釣りバカ日誌4(松竹)

7位/遠き落日(松竹)
1992年7月4日に公開された。監督は神山征二郎、脚本・原作/新藤兼人・渡辺淳一。出演者は三田佳子/三上博史/仲代達也/牧瀬里穂/田村高廣/河原崎長一郎/長門裕之/山城新伍/馬渕晴子/尾美としのり/原知佐子/石野真子/山本圭/ベンガル/仲谷昇/春川ますみ/その他。主題歌「愛、とどきますか」は和田アキ子が歌っている。 第9回ゴールデングロス賞優秀銀賞を受けている。
本作は、渡辺淳一の小説「遠き落日」と新藤兼人の著作「ノグチの母 野口英世物語」(小学館)を原作内容にしている。世界的な細菌学の権威として広く知られる偉人、野口英世の生涯にスポットを当てた作品。
野口英世に関する渡辺淳一の小説に書かれた、野口の借金癖や浪費癖などの性癖面での欠点に力点を置かずに、野口英世(本名は清作)の一生を、母シカとの関係を通して人間・野口英世を描いた伝記的作品である。
配給収入は15億円を記録している。本作品のストーリーは、貧農に生まれた主人公、清作(英世)は幼少のころ母親が目を離したすきには左手に大火傷をしてしまう。
母親のシカは、貧しさや左手の不自由さにいじけないように清作を小学校へあげる。清作も学校ではいじめられながらもシカの必死に働く姿を励みに不自由な身体と貧しい生活の中で、ひたすら勉学に励み成績はみるみる向上し、高等小学校への道も開かれる。
やがて、周りの人々の善意で手術の費用が集められ、清作の左手も動かすことが出来るようになった。これをきっかけに清作は医学の道を志すようになる。清作を英世と改名し、次々と難関を突破医師の資格を得ることになる。
だが、医師となった英世も不自由な左手や研究や診察をさせてくれない教授達の態度に、自暴自棄となった英世は酒や女におぼれる日々を送るが、やがて日本で医学を学ぶことに限界を感じアメリカに渡って細菌学に取り組む。
渡米して10年、研究の結果梅毒のスピロヘータの発見で世界に名が知られるようになる。その後、黄熱病の研究のため渡ったアフリカで、黄熱病にかかり51年の生涯を閉じた。

偉人としての野口英世を描いた本は多く、やけどの不自由な身体と貧しい生活の中で努力精進して成功を収める。いわゆる偉人伝中の人物として描かれているものが多い中、本作品では単に偉人としてだけでなく、遊郭通い、たかり、酔っぱらいの姿も含まれ「人間としての野口英世」を描いている。

8位/ゴジラVSキングギドラ(東宝)
1991年12月14日に公開された。前作に引き続き脚本と監督は大森一樹、特撮監督は「ゴジラVSビオランテ」の川北紘一、撮影は「リトル・シンドバッド 小さな冒険者たち」の関口芳則がそれぞれ担当している。
出演者は、中川安奈、豊原功補、小高恵美、原田貴和子、佐々木勝彦、チャック・ウィルソン、ケント・ギルバート、ダニエル・カール、森末慎二、風見しんご、小林昭二、佐原健二、山村聡、西岡徳馬、時任三郎、矢追純一など多彩。第15回日本アカデミー賞特撮技術省(特別賞)第10回ゴールデングロス賞最優秀銀賞を受賞している。
本作は、当方創立60周年記念作品として製作。ゴジラシリーズ第18作品である。前作の「ゴジラ対ビオランテ」成功を受けて創られた作品で、ゴジラのライバルとして名高いキングギドラが登場して一対一で戦うという特撮史上初のタイムトラベルを組み込んだことは新しい展開である。
また、高層ビル群の東京では従来のゴジラでは、見劣りするとして前作の80メートルの身長を100メートルにした。
配給収入は14億5千万円を記録している。物語では、1992年突如東京上空にUFOが飛来。UFOには23世紀からやってきた未来人の使者が乗っていた。
21世紀中にゴジラによって原子力発電所が破壊され23世紀に人類が死滅すると予言する。そのためにゴジラを抹殺するためにやって来たと伝える。そこで恐竜が核実験でゴジラ化する前の1944年にワープし、ゴジラの誕生をくい止めることに成功した。
しかし、現代に戻るとゴジラの代わりに怪獣キングギドラが出現。日本は壊滅的な被害にあっていた。これは、23世紀にアメリカ、中国、ロシアをしのぐ超大国になった日本の国力を低下させるために20世紀の日本にやってきた未来人の陰謀だった……。
本作では、ゴジラが放射能を浴びて怪獣になる前の姿が登場したり、タイムトラベルを使ってゴジラの誕生を阻止しようとするなど、ゴジラシリーズの中でも意外性に満ちたつくりになっている。
東宝特撮で初めてタイムトラベルをストーリーの鍵としていることが特色である。タイムトラベルのストーリーは、1985年第1作が上映され大ヒットした「バック・トゥ・ザ・フューチャー」からアイディアを組み立てたといわれている。
このほかにも、人間そっくりのアンドロイドやロボットで戦うヒロインなどは、ハリウッドのSF映画から影響を受けたものである。

9位/男はつらいよ・寅次郎の告白(松竹)
1991年12月21日に公開された。監督山田洋次、脚本は山田洋次と浅間義隆、出演は渥美清、吉岡秀隆、後藤久美子、吉田日出子、夏木マリ、笹野高史、前田吟、佐藤蛾次郎、三崎千恵子、下條正巳、笠智衆、倍賞千恵子ほか。
「男はつらいよ 寅次郎の告白」は本作でシリーズの44作目。前作と同様に甥の満男と泉、寅次郎と昔なじみの料亭の女将聖子との恋が同時進行で描かれている。本作は、第2回文化庁優秀映画作品賞長編映画部門に輝いている。
配給収入は14億2千万円を記録している。本作は甥の満男を中心に描く青春ドラマ風に仕立てられている「満男シリーズ」としては第3弾である。満男が惚れている及川泉(後藤久美子)が東京での就職を希望して上京する。
久しぶりにあった泉に満男は満面の笑みで迎えた。翌日、高校の先生に紹介された楽器店に出向いたが、高卒での差愛用は難しいといわれてします。泉は傷心のまま母親のいる名古屋に戻る。そこに待っていたのは、母親が付き合っている男性を自宅に招き入れたことである。
母親とけんかをして自室にこもって泣く泉。数日後満男のもとに鳥取砂丘の絵葉書が届く。手紙を読んだ満男は母親の制止を振り切って泉のいる鳥取に向かう。そのころ泉は偶然鳥取を旅していた寅さんと出会うというという設定。その後、寅さんは二人を連れて昔なじみの料亭へ行く。
そこの女将とはかつて寅次郎は所帯を持とうとしていた相手であった。翌日、寅次郎は鳥取駅で二人を見送り旅に出る。寅次郎のいつものドタバタよりも甥っ子の満男と泉を温かく見守ることに焦点を当てた物語になっている。
「男はつらいよ」シリーズの第42作目以降は、寅次郎の出番を減らすための方策であった。病気になった渥美に配慮して、立って演じるシーンを少なくした結果であるが、渥美の病気のことはごく一部の人間しか知らされていなかった。
この44作目の撮影中は、スタッフに挨拶されても笑顔で答えることさえ辛く。見物の方への挨拶もできない」と言っていたという。このような事情を知らないスタッフや映画撮影の見物客は、「愛想が悪い」と批判することもあったという。
体調が悪くなったために、42作からは甥の満男を主役にしたストーリーが作られ、いままで年2本作っていたシリーズを1本に減らし寅次郎の出番を最小限に減らしている。

10位/釣りバカ日誌4(松竹)
1991年12月23日公開された。監督は「釣りバカ日誌」シリーズの栗山富夫、脚本/山田洋次、堀本卓、関根俊夫、原作/ やまさき十三/画/北見けんいち、(小学館「ビッグコミックオリジナル」連載)である。
出演は、西田敏行、石田えり、三国連太郎、丹阿弥津子、尾美としのり、佐野量子、加藤武、谷敬、戸川純、笹野高史、内海和子、中本賢、栗千春ほか。
本作は、釣り日誌バカシリーズの第4作。自他ともに認める「釣りバカ」といわれる万年平社員のサラリーマン浜崎伝助ことハマちゃんと釣り仲間で伝助が務める建築会社の社長スーさんが、繰り広げる様々な騒動をコメディータッチで描いている。映画のほかにテレビアニメ化、テレビドラマ化もされている。
配給収入は、14億2千万円を記録している。本作のストーリーは、夫婦円満だが子宝に恵まれず悩んでいた二人だがついにみち子さんが懐妊する。伝助は大喜び。そんな中、伝助が務める鈴木建設の社長の甥の和彦が鈴木建設に入社する。
スーさんは覇気のない和彦を心配していたが、手違いで、配属先は伝助がいる営業三課。和彦は配属先の三課で仕事は二の次三の次、趣味に生きる自由人の伝助に憧れてしまう。
そんな浜崎家に出入りするうちに、伝助の親友八郎の妹「町子」に出会い恋に落ちてしまう。しかし、2人の交際が八郎に知られ、八郎が大反対して大ゲンカになる。反発した2人は和歌山県の宇良に駆け落ちしてします。
驚いたスーさんは伝助に2人を連れ戻すよう特別休暇を与える。しかし、伝助は2人を連れ戻すという口実で釣りの準備を整えてイカダ釣りのメッカの由良へ向かう。
それを知ったスーさんは居てもたってもいられず和歌山へ向かった。案の定釣りを楽しむ伝助だった。しかし、スーさんと伝助は二人の固い決意もわかり婚約を認めることに。
その後、和彦と町子の結婚式となり盛大に盛り上がる中、みち子さん出産の知らせが届く。ハマちゃんは式をほっぽり出して病院に駆け込む。そして、待望の愛息子「鯉太郎」の誕生を迎えた…。恋騒動から浜崎家第一子誕生までを描いたドタバタコメディーになっている。

