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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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原節子 雪の札幌ロケで大騒動

2019.08.20 by 西川昭幸

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1951(昭和25)年〜1955(昭和29)年

「白痴」ロケで原節子ご難 

松竹映画の「白痴」は、雪の札幌を舞台に人間社会の醜い姿を赤裸々に描いたもので、ドストエフスキーの原作を黒澤明が監督した作品。

物語は、戦犯で処刑寸前に救われたショックから、白痴と呼ばれるようになった男(森雅之)をめぐる、男女の愛憎劇。原節子が「かこわれ者」でありながら気品のある女を演じ、特に黒マント姿が印象的で話題になった。

激怒した黒澤監督

この作品、舞台をロシアから北海道へ移して映画化した野心作。当初4時間25分の長さで前後編に分けて上映されることになっていたが、試写を見た松竹首脳陣が難色を示し、大幅にカットされることに。

それに激怒した黒澤が“切りたければフィルムを縦に切れ!”と怒鳴ったという逸話が残されている。結局2通りのバージョンが作られ、長尺版の3時間30分ものは、東京・東劇で3日間だけ上映された。

俳優は、前年北海道ロケに来たばかりの、若々しい三船敏郎、札幌生まれで人気絶頂の森雅之、加えて女優は「ジャコ万と鉄」の撮影以来、今度で来道2度目の20歳になったばかりの久我美子、それに人気絶頂の原節子。

出迎えたファンの歓迎が凄かった

ロケ班の第1陣が札幌入りしたのは、1951(昭和26)年2月16日である。出迎えたファンの歓迎が凄かった。札幌駅前に数百人のファンが殺到し、警官が10数人も出て整理に当たったほど。

「白痴」の画像
白痴(昭和26年)

第1陣の原節子、東山千栄子らの一行7人が来たのは、2日遅れの18日だった。この日のファンの歓迎ぶりは、第1陣の時より凄かった。駅を取り囲んでいた数100人のファンは、汽車が入ったとみるやホームに殺到したのである。原節子は、雪のホームでとりすがるファンにもみくちゃにされ、揚げ句に、すってんころりんと転ばされてしまった。

ほうほうの体で改札を通ったが、今度は外で待ちかまえていたファンの一隊が襲いかかった。制止に当たった警官も、駅員さんも突き飛ばされ、窓ガラスを壊すやら、大声を出すやらで、一行は30分間も駅長室にカン詰にされてしまった。仕方なく裏口から脱出、線路づたいにようやく宿舎に入る始末。

道の真ん中でサイン攻めに

しかし、これで一件ケリがついた訳ではなかった。そうと気づいたファンが、今度は宿舎に押しかけ、雪を投げたり、玄関を叩くやらの大騒ぎ。「ああ、ゆっくり眠りたい」と原節子がつぶやいたとか。もう1つのおまけは、ロケも大詰めに近づいた3月のこと。

残すは、1カットだけとなった雪待ちのある日、原節子は大きなマスクを掛けたお忍び姿で街へ。ところがたちまちファンに発見され、道の真ん中でサイン攻めに会ってしまう。

ほうほうの体で宿にたどり着いた原節子、ついに「人に見られるのがいや!」と言って部屋に閉じこもってしまった。何とも笑えない、大変な札幌ロケだった。

撮影場所は、真冬の2月から約2週間、札幌市内を中心に撮影された。札幌駅前、大通り、中島公園、北海道大学構内、月寒など。冬の札幌が効果的に描かれ、札幌の街・雪・氷など美しく撮ったカメラワークが絶賛された。札幌市の良き時代を記録した、貴重な作品ともいえる。筆者はDVDでしか見ていないので、大画面で見たい作品の1つだ。

Filed Under: 昭和(中期) Tagged With: 三船敏郎, 久我美子, 原節子, 松竹, 森雅之, 黒澤明

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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