
1992(平成4年)年
1992年(平成4年) 配収ベスト10
(一般社団法人日本映画製作連盟より)
1位/紅の豚(東宝)
2位/おろしや国酔夢譚(東宝)
3位/ドラえもん・のび太と雲の王国(東宝)
4位/ドラゴンボールZ・激突100億パワーの戦士たち(東映)
5位/ミンボーの女(東宝)
6位/ドラゴンボールZ・極限バトル三大超サイヤ人(東映)
7位/遠き落日(松竹)
8位/ゴジラVSキングギドラ(東宝)
9位/男はつらいよ・寅次郎の告白(松竹)
10位/釣りバカ日誌4(松竹)

1位/紅の豚(東宝)
1992年7月18日に公開された。原作は月刊も出るグラフィックに連載された「宮崎駿の雑誌ノート」の中の「飛行艇時代」である。監督は宮崎駿、脚本は宮崎駿と宮崎駿の盟友である鈴木敏夫の二人で担当している。スタジオジブリ制作による劇場用アニメーション作品。
もともと制作は日本航空の機内上映用映画として製作されたが、製作が長編化されたために劇場用として公開された。劇場公開後も機内上映用としても国際線で上映されている。
声の出演者には、森山周一郎、加藤登紀子、岡村明美、桂三枝(現桂文枝))、上條恒彦、大塚明夫など。また、声優出演の加藤登紀子は主題歌とエンディング曲を歌っている。
本作の配給収入は、28億円を記録している。宮崎監督自身が幼い頃から空を飛ぶことに憧れていて、自分の夢を描いた作品で「中年男のためのマンガ映画」にしたいと言っている。
本作は、第一次世界大戦後の世界大恐慌時代のイタリアのアドレア海を舞台に、深紅の飛行艇を乗り回す飛行機乗りの豚のポルコ・ロッソは、かつては空軍のエース飛行機乗りであった退役軍人であったが、あることがもとで自分に魔法をかけ豚に変身した。
今ではアドリア海にはびこる空中海賊を捕らえる賞金稼ぎとして活躍している。魔法により豚になったポルコ・ロッソは、豚になっても悲壮感は一切なく、むしろそれを楽しんでいる陽気で気のいい風でもある。そんな大人の愛とロマンを持ち込んだジブリ異色の作品の物語である。


2位/おろしや国酔夢譚(東宝)
1992年6月27日公開された。原作は、井上靖による長編小説の「おろしや国酔夢譚」(おろしやこくすいむたん)である。
脚本・監督は「敦煌」の佐藤純彌。共同脚本に「必殺4恨みはらします」の野上龍雄と「タイガースメモリアルクラブバンド ぼくと、ぼくらの夏」の神波史男。撮影は「マリアの胃袋」の長沼六男がそれぞれ担当している。
出演は、緒形拳/江守徹/川谷拓三/西田敏行/三谷昇/沖田浩之/オレグ・ヤンコスキー/ユーリー・ソローミン/マリナ・ヴラディ等。
本作は、1966年から1968年にかけ『文藝春秋』に掲載され、文藝春秋から刊行。日本文学大賞受賞、映画化の際に徳間文庫でも刊行されている。漂流した神昌丸の乗組員、大黒屋光太夫をはじめとする17人の運命を、日露の漂流史を背景に描き出している。広大なシベリア大陸を走り抜けた日本人の壮大な冒険記を描いた歴史小説の映画化である。
本作品は日本アカデミー賞の優秀主演男優賞に緒形拳、優秀助演男優賞に西田敏行、その他最優秀撮影賞・優秀照明照・優秀音楽賞・優秀美術賞・優秀録音賞を受賞している。
1991年のソ連崩壊の時期に重なり、ロシアとなったが、撮影には、サンクトペテルブルク撮影所レンフィルムの協力のもと製作費45億円をかけ大規模なロケが行われた。
配給収入は18億円を記録した。本作は、鎖国時代の1782年、伊勢を出帆し江戸へ向かっていた神昌丸が嵐のために難破、船頭の大黒屋光太夫をはじめ17名の乗組員を乗せ漂流することになった。9カ月後に北の果てカムチャッカに漂着する。
その時生き残ったのはわずか6名となっていた。船頭の光太夫はなんとか帰郷への手立てを探りながら、オホーツク、ヤクーツク、イルクーツクと厳しい寒さと戦い仲間を失いながらもシベリアを転々とする。
そして、最後の望みを賭け、エカテリーナ二世への直訴を決意、はるばるサンクトペテルブルクに赴き、女帝エカテリーナのへの謁見が決定し、許可をえて帰国する。しかし、帰国できたのは3名だけだった。
その間、実に9年9カ月やっと帰国を果たしたが、鎖国中の幕府は彼らを迎え入れようとはせず、1人は病死、光太夫ら2人は留置されてしまう。やがて松平定信のはからいで光太夫は幽閉という扱いで、迎え入れられることになる。「おろしや国酔夢譚」は、日露の漂流史を背景に描き出した雄大かつ深遠な人間ドラマ作品に仕上がっている

3位/ドラえもん・のび太と雲の王国(東宝)
1992年3月7日公開された。藤子・F・不二雄原作の月刊コロコロコミック1991年10月号から1992年1月号に掲載されたドラえもんシリーズの作品をもとに作られた映画化第13作目。
脚本は原作者の藤子・F不二雄が執筆、監督は「ちびまる子ちゃん」の芝山努、作画監督は富永貞義、撮影監督は斉藤秋男がそれぞれ担当。エンディングテーマ「雲が行くのは…」の作詞・歌は武田鉄矢が行っている。また、本作は第9回ゴールデングロス賞最優秀銀賞に輝いている。
配給収入は、16億8千万円を記録している。原作は「月刊コロコロコミック」連載をもとに製作されるのだか、原作者の藤子・F・の不二雄の体調が悪く、上映時にはのび太と雲の王国のラストの部分はまだ描かれていなかったため原作よりも映画が先行してしまった。
その後映画上映から2年を経た1994年3月にのび太と雲の王国の完結篇が「月刊コロコロコミック」に掲載され完結した。このため、次回作の映画「ドラえもん のび太とブリキの迷宮」の上映よりも後の「月刊コロコロコミック」発売となる変則となっている。
本作は、地球の環境破壊を引き起こした地球人への報復として、大洪水で地球を滅亡させようとする天上人と、それを止めようとするドラえもん達の戦いを描いた作品。
環境破壊に対する思いを天井人を通じて描いており、ドラえもん映画作品のなかでは「のび太とアニマル惑星」と同じように環境問題を告発した作品のひとつである。
また、テレビ朝日でのアニメ放送開始以来のび太のパパ(野比のび助)を演じてきた声優の加藤正之氏が、本作公開1年後に死去したため、本作がのび助の加藤が出演した最後のドラえもん映画となった。
