• Skip to primary navigation
  • Skip to main content
  • Skip to primary sidebar
  • Skip to footer

日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

  • 令和
  • 平成
  • 昭和(後期)
  • 昭和(中期)
  • 昭和(初期)
  • 大正
  • 明治
  • アニメ
  • よもやま話

観客はトーキーの素晴らしさを知った

2019.06.19 by 西川昭幸

0

1926(昭和元年)年〜1934(昭和9)年

完全トーキー化まで難産続く 

初期のトーキーには、機械式の音声機に似た音量の不足、音声の不明確さという欠点も多くみられた。しかし、1927(昭和2)年に、アメリカで製作された本格的トーキー映画「ジャズシンガー」という立派な見本があるので、日本の映画界もこれを無視して無声映画に固執することはさすがにできなかった。

もし、外国から続々と入って来るトーキー映画を無視すれば、国際競争の波に乗り遅れることは目に見えていたからだ。むろん日本でも、トーキー化への試みは行われていた。皆川芳造が、小山内薫の監督で製作した「黎明」は、新劇俳優たちが出演した30分足らずの映画だったが、これがもし成功していれば、世界で最初のトーキーになるはずだった。

しかし、東京で試写をした後、一般には公開されず、地方の劇場で添えものとして使われたに過ぎなかった。同じシステムで1930(昭和5)年、日活第1回トーキー映画と銘打って、溝口健二監督が「ふるさと」を製作しているが、こちらは部分トーキーというもの。

トーキー初期の、試行錯誤的作品

主役の歌手、藤原義江が歌うところだけは、きちんと録音されているが、セリフにいたっては、簡単な部分だけが録音され、複雑なところは字幕のままという不完全なものであった。これもトーキー初期の、試行錯誤的作品のひとつだった。

アメリカ映画「モロッコ」 昭和6
アメリカ映画「モロッコ」 昭和6

この時期のトーキーの特徴は、レコードと映画の結びつきが挙げられる。ビクターやコロムビアなど、アメリカのレコード会社が日本に資本を投入し、上陸して来た。そのため電気吹き込みによるレコードが、大量にそして安価に提供されるようになった。

映画に主題歌をつけて、宣伝に使うようになるのもこの頃から。1929(昭和4)年あたりからは、主要な映画には必ず主題歌が付くようになり、またその歌は流行歌としてレコード発売された。日活はビクター、松竹はコロムビアといったぐあいに、各社それぞれアメリカ系のレコード会社と提携した。

このため、未曽有ともいえる映画主題歌氾濫時代を招いてしまい、本格的トーキーの出現を少し遅らせてしまった。おまけに、映画とレコードの資本的な結びつきで、レコード式のトーキー会社なども出来たが、試作的に手をつけただけで芳しくない成績に終わっていた。

そうした、ひとしきり大きな波が去った後の、1931(昭和6)年、外国映画のトーキー物が続々と入って来た。

活弁士の息の根を完全に止めたスーパーインポーズ

ときあたかも関東軍が南満洲の柳条湖付近で線路を爆破(9月18日)し、「満洲事変」が勃発した年である。ドイツのレマルク原作で第2次大戦を描いた名画、「西部戦線異状なし」。

バリモアの「海の巨人」。ルネ・クレールの名品「巴里の屋根の下」などが有った。

これらのトーキー映画は、トーキーの調子を少し下げ、説明者が日本語で解説した。今でも、外国語のままで映画を楽しめる人は、そう多くは無い。

まして昭和の初期の頃である。見る方にしても、そのほうが楽に楽しめたに違いない。この時点では、弁士にもまだ生き延びる道は残されていた。

ところが、スーパーインポーズが採用されるにおよんで、事情ががらりと変わる。最初に入って来たのが、ゲイリー・クーパーとマレーネ・ディートリッヒの「モロッコ」であった。

この映画が全発声日本版として、日本字幕付きで、この年の夏、北海道でも“無説明上映”された。これがまた大ヒット。観客はトーキーの素晴らしさを知った。併せて、この「モロッコ」が活弁士の息の根を完全に止めてしまった作品でもあった。

Filed Under: 昭和(初期) Tagged With: トーキー映画, 溝口健二

Primary Sidebar

著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

四方山話

「大林宣彦監督」の画像

「映像の魔術師」大林宣彦監督死去

2020.04.16 By 西川昭幸

「理想の母」を演じた名女優・八千草薫

2020.04.04 By 西川昭幸

98歳「日本一のおばあちゃん役者」他界 2010(平成22)年

2020.04.03 By 西川昭幸

他の四方山話記事を読む

アニメ

自分の感情をストレートに出すだけが人間ではない

2020.04.01 By 西川昭幸

日本映画に対するオマージュではなく、生きようとしている人に対するオマージュ

2020.03.24 By 西川昭幸

この胸が詰まっている感じに名前を付けてください

2020.02.24 By 西川昭幸

他のアニメ記事を見る

タグ一覧

スタジオジブリ (5) トーキー映画 (5) マキノ雅弘 (5) 三船敏郎 (14) 中村錦之助 (4) 今井正 (8) 勝新太郎 (5) 原節子 (5) 吉永小百合 (5) 大映 (9) 大河内傅次郎 (4) 宮崎駿 (6) 小津安二郎 (5) 尾上松之助 (8) 山本嘉次郎 (3) 山田洋次 (8) 市川崑 (6) 市川雷蔵 (4) 新東宝 (5) 日活 (19) 木下恵介 (7) 東宝 (66) 東映 (48) 松竹 (43) 栗島すみ子 (3) 梅宮辰夫 (3) 森谷司郎 (6) 森道夫 (6) 森雅之 (3) 活動写真 (15) 深作欣二 (5) 渥美清 (6) 片岡千恵蔵 (4) 牧野省三 (5) 石原裕次郎 (7) 稲垣浩 (5) 美空ひばり (8) 衣笠貞之助 (4) 角川映画 (4) 角川春樹 (5) 阪東妻三郎 (10) 降旗康男 (4) 高倉健 (12) 高峰秀子 (6) 黒澤明 (21)

Footer

新刊紹介

最近の投稿

  • 平成14年の日本映画年間ベスト10、No.1,2,3 2020.06.18
  • 平成13年の日本映画年間ベスト10、No.7,8,9,10 2020.06.18
  • 平成13年の日本映画年間ベスト10、No.4,5,6 2020.06.01
  • 「蜜蜂と遠雷」(配給/東宝) 2020.05.23

検索

Copyright © 2021 · 日本映画100年史