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日本映画100年史

本【日本映画100年史】をリアルタイムで加筆していく、ライブブックブログ!

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東宝を支えた2大シリーズ

2019.06.10 by 西川昭幸

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1966(昭和41)年〜1988(昭和63)年

若大将と無責任男

民主主義がようやく根付き、高度経済成長もあり、1億総中流化などと言われ、社会は少し落ち着いてきていた1967(昭和42)年。映画の方もそうした影響か、主役が演じて歌う軽い作品が好まれた。

この年の興収ベストテンは、①日本のいちばん長い日(東宝)、②クレージー黄金作戦(東宝)、③クレージーの怪盗ジバコ(東宝)、④レッツゴー!若大将(東宝)、⑤ゴー!ゴー!若大将(東宝)、⑥日本一の男の中の男(東宝)、⑦南太平洋の若大将(東宝)、⑧クレージーだょ天下無敵(大映)、⑨あゝ同期の桜(東映)、⑩大奥㊙物語(東映)。

加山雄三主演の若大将シリーズが3本。クレージーキャッツのシリーズ物が4本も入っている。東宝は前年からこのシリーズ2本が高稼動し、最も受けに入っていた年でもある。

加山雄三「若大将」シリーズ

1961(昭和36)年7月公開の「大学の若大将」(監督・杉江敏男)がシリーズ第1作。スクリーンから溢れる加山の魅力と爽快な大学生活に、若者たちは羨望のまなざしを送った。

このとき加山、24歳。「若大将」シリーズは1981(昭和56)年、「帰って来た若大将」まで、20年間で17作も続いた。

長続きの原因は、企画が高度経済成長時代にマッチしていたこと。併せて、主人公、田沼雄一(加山雄三)を、いま流行りの、歌の上手い大学スポーツ選手に仕上げたこと。それに絡むマドンナ(星由里子)が現代的で活発なこと。

マドンナを追いかけるライバル、通称・青大将(田中邦衛)を面白いキャラクターにし、ドラマの狂言回しにしたことなどがあげられる。しかし、若大将シリーズも加山が年を重ねると、さすがに苦しくなり、学生シリーズは1968(昭和43)年「リオの若大将」で終わる。加山雄三、31歳だった。

「エレキの若大将」昭和40年
「エレキの若大将」昭和40年

根強い人気が東宝の屋台骨を支えた

しかし、稼げる若大将は「社会人シリーズ」として1969(昭和44)年、「フレッシュマン若大将」(監督・福田純)で甦る。最後は1981(昭和56)年「帰って来た若大将」(監督・小谷承靖)で終わる。この若大将シリーズ、とにかく根強い人気があった。

映画で唄う歌もヒットチャートに入り、加山雄三は一躍ときの人となり、社長シリーズ、クレージー映画と共に1960年代の東宝の屋台骨を支えた。

加山はこのシリーズを振り返り、「若大将は自分の学生生活とはまるで違いましたよ。ただ、共通点も有りました。ぼくもおばあちゃん子で大食い。スポーツと音楽が好きだったから、映画は嘘と事実が半々くらいだったね」と語っている。

植木等「日本一の〜男」シリーズ

若大将と同じ時期、東宝はもう1本、稼げるシリーズを持っていた。それは、クレージー・キャッツの植木等を主役とした作品だ。とにかくサラリーマンに人気があった。

劇場は、初日などお客が入りすぎて札止めがあり「ハイ!それま〜でよ!」の連発だった。それが9年間続いた。

映画「ニッポン無責任時代」(監督・古沢憲吾)が公開されたのは、1962(昭和37)年7月29日で、クレージー映画の記念すべき第1作である。ちょうど「若大将」シリーズが始まった1年後になる。

当時、日本テレビの「シャボン玉ホリデー」で人気を上げていたクレージー・キャッツは「スーダラ節」が大ヒットしていた。作品はそのメンバーの植木等を中心に、「お姐ちゃん」シリーズで人気のあった、団令子、重山規子、中島そのみ、を絡ませたもので、これが予想以上に当たった。

その後、同年「ニッポン無責任野郎」(監督・古澤憲吾)が公開され爆発的人気になる。

1963(昭和38)年から、タイトルも「日本一の色男」(監督・古澤憲吾)となり、以降「日本一の〜男」シリーズとる。

「ニッポン無責任時代」昭和37年
「ニッポン無責任時代」昭和37年

映画がヒットを続けた要因は、時代が高度経済成長期で、サラリーマンは会社組織の中で働け、働けで個人が埋没。不満がしていた。そうした戦後復興期のサラリーマン群像を描いたことや、旧来の道徳観念を笑い飛ばし、持ち前の調子の良さと、明るさで戦後の世相をポジティブに乗り切って行く姿が共感をよんだ。役のは無責任男としてサラリーマンに歓迎された。

この「日本一の〜男」シリーズは、1971(昭和46)年まで、ほぼ毎年1本のぺースで10本作られている。最後の作品は1971(昭和46)年公開の「日本一のショック男」(監督・坪島孝)。

植木が演じる主役は、ハチャメチャなワルノリ・キャラクターを売り物にした。ときにはホラをふき、ときにはゴマをすり、ときには裏切り、どんな時にも調子よく、世の中を♪スイスイスーダララッタ……と渡ってウソのように成功してしまう男を、軽妙なテンポで描き、まさに時代を象徴するシリーズであった。

無責任男から、モーレツ社員へ

「日本一の〜男」シリーズは、クレージー・キャッツというより、むしろ植木等の主演映画であり、植木以外のメンバーが全員揃っての出演はない。植木のキャラクターは無責任男から、有言実行のモーレツ社員へと変化し、その後もシリーズ終了まで変化を続けた。

変化は当時の社会の情勢に対応した脚本家の読みだった。またこの作品の成功は、生みの親ともいえる、監督・古澤憲吾に負うところが大きい。

主演した植木等はこのシリーズの影響で「調子の良い、無責任男」と世間から言われていた。しかし、ふだんの植木は責任感が強く、仲間思い、酒も飲めない超真面目な男だった。名古屋市の浄土真宗のお寺に生まれ、厳格な父親の元で育てられた。

東洋大学文学部を卒業したインテリでもある。卒業後ギタリストとして活躍中に、ハナ肇にスカウトされクレージー・キャッツ結成に参加する。29歳の時である。

植木は、遊びのつもりで始めた仕事で人気者に成ったが「無責任男を演じるのは、抵抗が有ったけれど、やりたいことと、やらなきゃならない事は違うんだって気づかされ、プロ意識に徹することが出来たのは「シャボン玉ホリデー」だったね」と語っている。

1993(平成5)年、紫綬褒章受賞。1999(平成11)年、勲四等旭日小受章を受賞をしている。余談だが、後年母校の東洋大学が箱根駅伝で優勝できない事を残念がり、2002(平成14)年、塩川正十郎理事長のもと、植木等が会長になり「箱根駅伝で優勝させる会」を結成し、校友に寄付を呼びかけた。

寄付は多額になり、グランドと寮の整備。監督招致などの強化に使われた。そうした努力が、東洋大学を「大学駅伝」の常勝校にした。無責任男と言われた素顔の一部でもある。

Filed Under: 昭和(後期) Tagged With: 加山雄三, 星由里子, 植木等, 田中邦衛

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著者紹介(西川昭幸)

アバター1941年北海道生まれ。東洋大学社会学部卒。
映画会社勤務などを経て現在、公益社団法人理事。
<主な著作>
「北の映画物語」(北海タイムス社)、
「美空ひばり公式完全データブック 永久保存版」(角川書店)、
「活字の映画館 明治・大正・昭和編」(ダーツ出版)、
「日本映画100年史」(ごま書房新社)、
「美空ひばり最後の真実」(さくら舎)、
「昭和の映画ベスト10、男優・女優・作品」(ごま書房新社)

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